出産における男性の無力さと産まずして母になる弥生の存在
『海のはじまり』は、「人は、いつどのように“父”になり、いつどのように“母”になるのか」をテーマにしている作品でもある。ちなみに、夏には母親の再婚によってできた血のつながりのない父親・和哉(林泰文)がいて、しっかりと親子としての関係性が成り立っていることが、第1話で描かれていた。
実家に帰ってきた息子(=夏)の憔悴した表情や、雰囲気から“誰かが亡くなったのかな?”と察して、さり気なく黒のネクタイを渡す。そして、受け取った夏に「どうしたの?」と聞かれ、「親の勘」と答える場面は、義父という裏設定を知ってから見ると、より深みを増すシーンだ。
お腹のなかに宿った瞬間から海の母だった水季と、今まで父ではなかった夏。第1話では、「夏くんは産むことも堕すこともできないんだよ」「男の人は隠されていたら知らないでしょうね。妊娠も出産もしないで、父親になれちゃうんだから」と、産める母と産めない父の対比を明らかにして、妊娠出産における男性の無力さをはっきりと描いていた。しかし、弥生が産まずして母になるとすれば…。
大ヒットドラマ『silent』を送り出したチームが新たに紡ぐ家族の物語を、じっくり堪能していきたいと思う。
(文:菜本かな)
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