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“捨てられた子犬”のよう…目黒蓮が見せる“彼氏”として2つの表情とは? ドラマ『海のはじまり』第9話考察レビュー

text by 菜本かな

目黒蓮主演の月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)は、名作『silent』の制作チームが再集結し、“親子の愛”をテーマにした完全オリジナル作品だ。人と人との間に生まれる愛と、そして家族の物語を丁寧に描く本作の第9話の考察レビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:菜本かな】

メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。

弥生(有村架純)の思いやりが見える別れの言葉

『海のはじまり』第9話より ©フジテレビ
『海のはじまり』第9話より ©フジテレビ

 好き同士なのに別れる選択をすることって、本当にあるのだろうか? と思っていた。遠距離で寂しくさせるからとか、まわりに反対されるとか、家族の問題とか。

 そういった理由で別れた場合、大抵の人は「相手の幸せを思って…」と言う。でも、わたしはどこか綺麗事のように感じてしまっていた。厳しい言葉になってしまうかもしれないが、「好き同士なのに別れることが、相手の幸せにはならなくない?」「結局、自分がしんどいだけなんじゃないの?」と。

 だから、弥生(有村架純)が、別れ話をするときに、“夏のために”、“海のために”と他人に責任転嫁をしていたら、ここまで泣けなかったかもしれない。

「3人でいるの、だんだん辛くなった」「2人のことは好きだけど、2人でいると自分が嫌いになる」とすべてを自分視点で話していたからこそ、胸にグッときたのだと思う。

 夏(目黒蓮)も、「月岡くんのために」「海ちゃんのために」と言われていたら、引き止めることもできたはずだ。というか、その方が弥生も“相手の幸せを思って身を引いた優しい人”として去れたかもしれない。

 でも、“自分の幸せのために”別れを決意したことをしっかり伝えたのは、最後の優しさだったのではないだろうか。

 弥生はこれまで、恋人の夏にさえも本音を言えずに我慢をしてきたタイプの人間だ。そんな彼女が、「好きな人と離れても、自分が納得できる人生と、辛い気持ちのまま2人のために生きる人生。どっちにするか考えて、自分を選んだ。2人のこと、選ばなかった」とまで言い、最後の最後に「わたしは、月岡くんと2人でいたかった」と本音を漏らした。

 夏が、未練を残さないように。自分のことを忘れて、前に進めるように。引き止める隙を与えなかったことにも、弥生の思いやりが透けて見えて、涙が止まらなかった。

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