若葉竜也と井浦新が生み出した最高のシナジー
手術は事実上、不可能だったが、諦めきれない三瓶は吻合練習に励む。そんな三瓶に大迫は「絶対に手を出すな」「2分で縫うのは不可能だ」と警告した。当初よりミヤビの治療方針をめぐり、対立してきた三瓶と大迫。だが、ミヤビを救いたいという気持ちは同じだ。
大迫とミヤビの関係は性愛に結びつくものではない。ミヤビにとって大迫は母の命を救った恩人。そして脳外科医を目指すきっかけを作った人物でもあり、大迫は彼女をずっと見守ってきた。大迫がミヤビに向ける愛情はもはや親心に近い。だからこそ、彼女の記憶障害を治す方法を探り続け、三瓶のように吻合練習にも励んでいることが明らかになった。
それを知った三瓶は「やっぱりあなたは医者でしたね」と大迫を認める。大迫は「やっぱり君は……生意気だ」と返した。たったそれだけのやりとりなのに、お互いへのリスペクトが垣間見える。
特筆すべきは、若葉と井浦が映像作品デビューを果たしたのが同じ1998年だということ。そこから16年間、演劇の世界で培ったそれぞれの力が初共演となるこの作品で交わり、最高のシナジーを生み出している。
その場に居合わせた岡山天音と千葉雄大の後方援護的な芝居も力を添え、本作の中でも指折りの名場面となった。