繰り返されるセリフとミヤビが放つ光
最終回では、困難を極めたミヤビの手術とその成功が描かれると同時に、ミヤビと三瓶の“馴れ初め”が描かれた。大一番の手術を無事に乗り越えたとはいえ、ミヤビは眠り続けたまま。もしかしたら、彼女が目を覚ました時、記憶は失われているかもしれない。
そんな懸念を口にした三瓶に対し、星前は「忘れてても、全部憶えているんじゃない? ミヤビちゃんなら」と告げ、とびっきり優しい笑顔で三瓶にエールをおくる。第1話から本作を観てきた視聴者は、星前のこのセリフが、かつて三瓶がミヤビに対してことあるごとに伝えていた「記憶が失われても、強い感情は忘れません」という言葉と共鳴していることに気づくだろう。さらに、発話者を異にしたセリフの反復は続く回想シーンでも思わぬ形で描かれることになる。
病室のシーンから場面は変わり、暗い部屋で三瓶とミヤビは並んで床に座っている。ここで三瓶は、すでに故人である重度障害者であった兄を救えなかった過去について、悔恨を込めて語るが、このエピソードは9話で明らかにされたものだ。それから三瓶は「アンメット=満たされない」という本作のタイトルとなった言葉について「できた影に光を当てても、また新しい影ができて、満たされない人が生まれてしまう」と語る。
三瓶の医者としての実感と兄を救えなかったことへの自責の念が込められた言葉に対しミヤビは、「なんかお腹が空きましたね」とあっけらかんと呟くと、「自分の中に光があったら暗闇も明るく見えるんじゃないかな」と語る。
第1話から最終話に至るまで、悩み、苦しみ、傷ついた人たちの心に光を当ててきたミヤビを見守ってきた視聴者が、この言葉を聞いて感動せずにいることは不可能だろう。TVの前の我々もまた、画面越しにミヤビの光に照らされてきたのだから。三瓶はミヤビを真っ直ぐ見つめ、プロポーズをする。彼はミヤビの光に照らされた最初の人物であったのだ。