結末が冒頭へと繋がる…『アンメット』を見る喜びは終わらない
三瓶の告白に合わせてあいみょんによる主題歌「会いに行くのに」が流れる。ああ、もうすぐこのドラマは終わるのだ。しかし、この回想シーンは、ミヤビへのプロポーズでは終わらない。
「僕もお腹が空きました」と口にする三瓶に対して、ミヤビが持ってきたのはなんとグミ。「これ食べますか?」と三瓶に差し出すも断られたミヤビは、グミを一定のリズムで咀嚼することで幸せホルモンであるセロトニンが分泌される云々と、第1話の冒頭で、三瓶がミヤビに向けて発した言葉を反復する。言うまでもなくそれは、このドラマで2人が初めて交わした会話でもあるのだ。
セリフを介して、結末が冒頭へと繋がった。夜の回想シーンが明けると、窓から日光が燦々と差し込む病室のシーンに戻る。光と影のコントラストが素晴らしい。
目を覚ましたミヤビと彼女を見つめる三瓶の表情が交互に映される。繊細なライティングと高性能カメラによって、若葉竜也と杉咲花の顔が、従来の民放ドラマとは一線を画すクリアな映像で鮮やかに浮かび上がる。
果たしてミヤビは三瓶のことを憶えているのか。もちろん、このドラマはそれを大げさな演出で誇示したりはしない。三瓶を見つめるミヤビの涙袋が徐々に液体で満たされる過程を丹念に捉えることで、彼女の脳、いや、彼女の感情が三瓶をしっかり記憶していることが、この上なく静謐に、この上なく雄弁に表現されるのだ。
最終回の1時間弱はあっという間に過ぎていった。伝説の最終回と言っても過言ではないだろう。SNSを開くまでもなく「『アンメット』ロス」を嘆く声が聞こえてくる。
ただし、嘆くのは尚早だろう。なぜかと言うと我々には、ミヤビが三瓶にグミを勧める最終回の微笑ましいシーンを味わった上で、もう一度、第1話の冒頭で描かれた同じやりとりを見直す喜びが残されているからだ。
(文・山田剛志)
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