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食べることは生きること…『アンメット』が発してきたメッセージ

『アンメット』第11話より ©カンテレ
『アンメット』第11話より ©カンテレ

 少し話は戻るが、救急車が到着するまでの間、三瓶はミヤビが朝食用に買い溜めていたヨーグルトを冷蔵庫から取り出して食べた。その瞬間、三瓶の瞳に光が宿る。

 最終回では、ミヤビと三瓶が婚約へと至った馴れ初めが明かされた。南アフリカ・ケープタウンの国際会議で出会った2人。ミヤビが綾野(岡山天音)からのアプローチをかわすためについた嘘がきっかけで行動を共にし始めた2人はとある島に渡り、そこで三瓶が新型のウイルスに感染、ミヤビは婚約者のふりをする形で三瓶に付き添った。

 アンメット(=満たされない)という言葉のくだりは、2人が隔離されていた部屋で交わされたもの。「できた影に光を当てても、また新しい影ができて、満たされない人が生まれてしまう。どうすれば、くまなく照らして、アンメットをなくせるのか。その答えを探しています」

 重度障害者の兄を施設に入所させ、その存在を“見えなくしてしまった”という思いが拭えない三瓶は、目の前にあるろうそくの横に紙で作った筒を置き、そう語った。すると、ミヤビはその紙でろうそくを覆い、「こうすると影が消えます」と笑顔を見せる。

 さらにはお腹が空いたと言って、武志(小市慢太郎)と香織(阿南敦子)の夫婦が営む居酒屋「たかみ」の焼肉丼について話すミヤビに驚き、三瓶は「不安じゃないのか」と尋ねた。

 いつ日本に戻れるかもわからない。生きて帰れるかもわからない。そんな中でも笑顔を絶やさないミヤビは「自分の中に光があったら、暗闇も明るく見えるんじゃないかなって」と語る。

 そうして渡したのが、三瓶がいつも食べているグミだった。食べることは生きること。どんなに絶望的な状況でもお腹を満たし、生きようとしてきたミヤビ。そんな彼女の光が、大事なものを失った患者たちの心を照らしてきた。

 そしてきっと誰の心にも光はあって、私たちは照らし、照らされながら生きているのだ。そうやって照らし合えば、いつか影は消える。まずは自分の心の中にある光に気づき、絶やさぬようにすること。

 だから三瓶はミヤビが冷蔵庫に買ってあったヨーグルトを無我夢中で食べ、力を養ったのだと思う。〈冷蔵庫の中には食べ損ねたラブレター〉から始まる主題歌「会いに行くのに」(あいみょん)との重なり合いに心が震えた。

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