“信じる”力が奇跡を起こしたドラマ
手術後、ミヤビはしばらく眠ったままだったが、三瓶はそばで手を握りながら彼女が目覚めるのを信じて待った。本作は、この“信じる”という行為がさまざまな奇跡を生んだドラマだ。
連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)で共演して以来、何度も仕事を共にし、お互いに信頼を寄せ合う杉咲花と若葉竜也。最初にオファーを受けた杉咲が三瓶役は若葉しかいないと自らアポを取り、滅多に民放の連続ドラマに出演することがない若葉が、米田孝プロデューサーの「『アンメット』をドラマにしたい」という熱い思いに応えて出演を決めた。
杉咲と若葉はインタビューを読んでいても、ただ与えられた役を演じるのではなく、作品をつくるということに対しての熱量が高い。そんな2人の熱量が周囲にも広がり、本作の裏側はキャストとスタッフが頻繁にディスカッションを交わす活気ある現場だったようだ。
実際に俳優の提案が採用された例も多々ある。それだって根底に信頼関係がなければ、実現できなかっただろう。自分の意見を信じてくれるという安心感があるから、アイデアを出せる。そしてそのアイデアがすぐにはわかりづらく、想像力を必要とするものであったとしても、視聴者を信じて届けた。その結果、作品を称賛する多くの声が生まれた。それは最終回を迎えても鳴り止まない。
「川内先生、わかりますか?」
「わかります」
2人の“これまで”が、“これから”に繋がった瞬間。光とは、信じることによって生まれるものなのだろう。作品で扱うテーマと、制作チームの姿勢がこれほどまでに一致するのは珍しい。
『アンメット』という光がエンタメ界を照らした。物語が終わっても、その波紋は広がり続け、新たな光を生むことだろう。
(文・苫とり子)
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