無音とフラッシュカットの演出が活きる
無音の演出は他の場面でも。オペ室で津幡が「助手は……」という問いかけにミヤビが「私がやります」と答えるまでの間、劇伴が消えて、三瓶とミヤビのこれまでがフラッシュカットで映し出される。
「三瓶先生を見て、思い出した気がするんです。私には手術ができるって言ってくれたこと」。この病院に来てから、三瓶は何度もミヤビの背中を押してくれた。ミヤビはそのことを日記に記録しているが、リアルな体験として自分の中に残っているわけではない。
だけど、三瓶がかつて「記憶を失っても強い感情は心が覚えている」と言っていたように、ミヤビの心には三瓶の言葉も、声も、表情も、自分の感情も残っていて、オペ室で三瓶と目が合った瞬間にその全てが蘇ったのだ。無音とフラッシュカットを組み合わせた演出は、まるでミヤビの頭の中を覗いているような感覚にさせる。
その後、一度は日記に記録した三瓶との婚約の事実を修正テープで消して、上から「わたしは三瓶先生を信じる」と書き足すミヤビ。過去は関係なく、彼女は今の三瓶を信じることに決めた。