ミヤビの記憶に隠された不都合な真実とは
加瀬の手術はカテーテル専門医である綾野が担当し、見事成功。しかし、綾野は論文を書くために高学歴の患者を必要としており、ロボット工学の研究者である加瀬の手術に参加できるのは都合が良かった。つまり純粋な思いでミヤビに協力したわけではない。
第4話は、綾野が婚約者である麻衣(生田絵梨花)や、その祖父で西島医療グループ会長である秀雄(酒向芳)の前で見せる顔と、ミヤビの前で見せる顔の違いが印象的だった。
物腰の柔らかさとは裏腹に上昇志向が強く、麻衣との政略結婚を目論む綾野。秀雄からは西嶋グループに婿入りした後は経営の道に進むことを求められており、「カテーテルなんぞに未練はないだろうね」と聞かれた綾野は「会長のご命令とあらば当然ですよ」と答える。
その姿からは打算的な人柄が伺えるが、ミヤビにカテーテルについて熱く語る綾野にはまるで少年のような純粋さがあった。そもそも、カテーテルをやりたくて医者になったという綾野。
きっと本当はカテーテルにも、ミヤビにも未練があるのだろう。だけど、その未練を無理やり断ち切って、麻衣と結婚し、病院経営の道に進もうとしている。
加瀬の手術後、ミヤビが記憶を失う以前のように「どっちがいいですか?」と種類の違う缶ドリンクを持ってきた瞬間、過去に引き戻されたかのような表情にグッと心を掴まれた。
そんな自分を取り繕うかのように、綾野は笑顔を作ってその場を去っていく。綾野の葛藤をまざまざと映し出す岡山天音の余韻を残す切ない演技が最高だ。
なぜ、綾野がそうまでして権力に固執しているのかも気になるところ。一方、大迫も西島の前では普段とは違った顔を見せる。西島の「川内先生だっけ?万が一にも記憶が戻ってもらっちゃ困るよ」という問いかけに、「承知してます」と答える大迫。
三瓶の治療方針に反対するのは、単に医者としての方針の違いに留まらなさそうだ。ミヤビの記憶に隠された不都合な真実とは一体、何なのだろう。複雑に絡み合う人間模様から目が離せない。
(文・苫とり子)
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