アンメットを形作る、挑戦的かつ、繊細な演出
記憶障害になった経緯と、手術の手順だけを頭に入れてオペ室に立ったミヤビ。風間(尾崎匠海)はミヤビに余計な情報を入れないようにあえて顔を合わせず成増(野呂佳代)は星前とのかけ合いでミヤビの緊張をほぐす。
手術には参加していない看護師の新井(中村里帆)も自分ごとのように緊張しながら、目の前の業務に取りかかった。
そして本番。ドラマにありがちなトラブルもなく、「ふん合終了しました」「マイクロあげます」「アドソン鑷子」といった最低限の台詞だけで手術シーンが展開されていく。
他にも、星前がミヤビに「全科専門医レベルの知識と技術を」と熱く語る場面で噛んだとみられる台詞をそのまま使ったりと、本作には挑戦的な演出が多い。
けれどもそれが、まるでドキュメンタリーのような臨場感をもたらしている。
削ぎ落とされた演出の中で見せるキャスト陣の芝居も素晴らしいの一言に尽きる。特に手術シーンは全員マスクで表情が隠れていたが、唯一見えるパーツの目だけでそれぞれの感情が伝わってきた。緊張感に溢れていた顔が、無事に手術が終わった瞬間からホッとした表情に変わる。ミヤビに集まるみんなの視線が温かい。
打ち上げで風間が語ったように、丘陵セントラル病院は各科が連携し、星前が目指す全科専門医レベルの医療を実現している。みんなで足りない部分を補い合って、生きていく。それが当たり前の社会に、というメッセージが感じられる第5話は最終回レベルの満足度だった。