求めているのは特別扱いではなく理解
抗てんかん薬の服用を中断すれば、てんかん再発のリスクがある。ミヤビはそれを分かった上で断薬し、夜勤中にてんかん発作を起こした。夢遊病者のような歩行自動症に加え、発作性発語が現れた後に、全身けいれんを発症したミヤビ。それらの症状から、ミヤビは側頭葉てんかんを患っている可能性が高かった。
同期の星前(千葉雄大)から事情を聞いた綾野(岡山天音)も三瓶に協力する。綾野がなぜか消されていた脳波室の動画データを復元すると、そこには睡眠脳波を取っている最中にてんかん発作を起こすミヤビが映し出されていた。つまり、大迫はミヤビに嘘をついていたことになる。
「川内先生のてんかん発作を伏せていたのはどうしてですか?川内先生の記憶障害を治したくなかったからですよね?」と大迫に迫る三瓶。さらに“てんかん性健忘”についての論文を提示し、側頭葉てんかんが記憶障害を引き起こす可能性について指摘する。大迫は何度もミヤビの脳波を調べた上で、記憶障害だけが残る血中濃度の低い抗てんかん薬を処方していた。
事実が明らかになっても、大迫は一切顔色を変えない。高濃度の抗てんかん薬が認知機能を低下させるという理由で最小限度の服用量を決めたと説明する。それが真実なのか、それとも嘘なのか。嘘だとしたら、なぜ大迫はミヤビの記憶障害を残そうとするのか。麻衣(生田絵梨花)は大迫について、いつも全体を見て最善を考える人間であり、その大迫がすることには何か意味があるという。
だが、三瓶が納得できないのはそこだ。大迫は全体の利益を優先し、個人の犠牲に目を向けない。同じ頃、ミヤビは、十分な睡眠をとるため夜勤を減らしたいと申し出たところ上層部から休職を勧められた山本の職場を訪れた。ミヤビが丁寧に山本の抱える障害について説明し、合理的配慮を求めても、特別扱いはできないとして突っぱねる上層部の態度は大迫のそれと重なる。
たしかに夜勤を減らしてほしいという山本の要求を呑めば、他の社員から不満が出る可能性はある。障害のある人が働きやすい環境を整えてほしいと言われても、それだけの余裕が会社にあるとは限らない。
だからといって、彼らを追い出していたら社会は成り立たなくなる。院長の藤堂(安井順平)が言ったように、求めているのは特別扱いではなく理解。各々が抱える病気や障害について正しい知識を持ち、一緒に最善策を模索していく。それは長期的に見れば、必ず社会全体の利益になる。誰だって事故や病気で障害を負うリスクを抱えているのだから。たとえ、そうなったとしても居場所のある社会にしたい。