若葉竜也&岡山天音の“シンプル芝居”はなぜ胸を打つのか
そして今回、もう一つ嬉しかったのは綾野が自分の立場を顧みずに三瓶に協力したことだ。
大迫が嘘をついている可能性を知り、ミヤビが心配で麻衣の言葉もまともに入ってこない綾野。口元においた指先や、前髪のかかった瞳から無意識に発露される色気が半端じゃない。おそらく政略結婚と口では言いながら、本気で綾野を愛しているであろう麻衣がヤキモキするのも分かる気がする。
これまではどちらかといえば、腹に一物を抱えたキャラか人畜無害感のある友達ポジションの役を演じることが多かった岡山天音。そうした要素も兼ね備えながら、憂いを帯びた色気のある大人の男性像を体現している。
このドラマを観ていて不思議なのは、次回が待ち遠しいという感覚にならないこと。それは一話一話に映画1本観終わったくらいの満足感があり、その余韻に浸ってる間に一週間がすぐ過ぎ去ってしまうからだ。その満足感を作り出しているのが、無駄なものをそぎ落とした演出であり、シンプルに映し出される役者陣の名演である。
中でも作品を牽引しているのが、多くの映画関係者・ファンを惹きつけてやまない若葉と岡山の繊細な演技。そんな二人が、同じく化け物級の演技者である杉咲を巡って火花を散らしているのがたまらないのである。
(文・苫とり子)
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