役者の個性を最大限引き出す製作陣
小市慢太郎と阿南敦子という2人の名バイプレイヤーによる演技が心を打った第7話。手術後、鰹出汁の香りを嗅いだ高美の感極まった表情や香織との可笑しみのあるやりとりに涙が頬を伝った。そして高美はお店を再開し、病院スタッフたちも駆けつける。
食べることは生きること。本作には食事シーンが多く、特にミヤビが豪快な食べっぷりを見せるシーンが印象的だ。その華奢な体のどこにそんな胃袋が…と思うが、モリモリ食べる杉咲の姿が愛らしく、ずっと見ていたくなる。こういう時に思うのだ。「このドラマの製作陣は、視聴者が見たいものを分かってる!」と。
第7話ではカフェの店員役で映画監督の今泉力哉がサプライズ出演したことでも話題に。今泉監督は、『愛がなんだ』(2019年)や『窓辺にて』(2022年)などを手がけてきた恋愛映画の名手で、三瓶役の若葉竜也も彼の作品に数多く出演してきた。
今泉監督扮するカフェの店員は三瓶が頼んだアイスコーヒーに問答無用で抹茶パウダーを振りかける。「まぁ言ったらね、砂糖もミルクも変ですから」と持論を展開する店員を、じっと睨みつける三瓶。そういう映画ファンを喜ばせる粋な演出もさることながら、ローテンションで一見とっつきにくい若葉の独特の“可愛さ”を引き出すのがこの製作陣は上手い。
口元に手を当てる仕草が色気っぽい綾野役の岡山天音に関してもそうだが、製作陣は役者の魅力を熟知した上で役に反映されている部分が多いような気がする。良い意味で狡くて、目が離せない。
(文・苫とり子)
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