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若葉竜也と杉咲花による奇跡の10分

『アンメット』
『アンメット』第9話より ©カンテレ

 三瓶は西島からミヤビの記憶障害の原因について聞いたが、大迫が予想していた反応とは少し異なり、ミヤビに手術をさせてほしいとはすぐには言わなかった。三瓶はいつも目の前の命と向き合っているが、迷いがないわけではないのだ。

 夜の病院でミヤビと三瓶は子供の頃の話をする。その流れで、三瓶は兄への思いを語り始めた。兄を施設に入れたことを、“見えないように”しただけではないかという思いがあった三瓶。

 “見えないよう”にというのは、自分たちの生活のために兄を犠牲にした…ということ。その罪悪感があったからこそ、三瓶は意識障害の少女が全体のための犠牲になることに耐えられず、ITB療法を施したのだろう。少女は意識を取り戻したものの、結果的に数日後には肺炎で亡くなった。

 以前、大迫は三瓶のことを「軽々しく患者に希望を見せる危険な医者」と非難したが、彼の中にも少女の母親に希望を持たせるだけ持たせて、何もできなかったという思いがきっとあるのだ。だからミヤビのことも救いたいのに、答えが出せない。

 だけど、三瓶の治療がなければ、少女と母親は言葉を交わすことができなかった。たった数日。それでもコミュニケーションが取れたことが、どれだけ母親にとって救いとなったか。ミヤビだって、三瓶に背中を押されたから脳外科医として復帰することができた。

「三瓶先生は、私のことを灯してくれました」とミヤビは言う。すがるように三瓶はミヤビに近づき、2人は固く抱き合う。互いに光を当て、影を消すように。

 そんな三瓶とミヤビによるラスト10分の場面を、きっと私は永遠に忘れないだろう。ドラマや映画は“覗くもの”で、登場人物たちは覗かれていないという“てい”で日常を送るが、実際には目の前にはカメラがあり、体裁が整った台詞も用意されている。

 だけど、あの瞬間、三瓶とミヤビには覗かれている意識なんて一切ない…と多くの人に思わせた。感情が言葉に先行して声が詰まり、伝えきれない思いはもどかしさとなって手足の動きに反映される。

 杉咲花と若葉竜也の圧倒的な演技力、2人が度重なる共演経験で得た互いへの信頼感、スタッフとキャストが積極的に意見を交わすものづくりの現場。どれか一つでも欠けたら実現しなかったであろう奇跡の10分間だった。

(文・苫とり子)

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