リスクの高い“事前情報なし”宣伝
さらに、商社が新しい取引先への誤送金事件という(あってはならないのだが)日本企業が犯しそうなミス、建国間もなく、かつ、宗教対立による内戦を経験し政情不安定なバルカ共和国という舞台設定も、現実とフィクションの間をギリギリに突くようで、視聴者を惹きつける。
加えて、番組前の告知は全くなく、タイトルと砂漠の映像のみという徹底ぶりだ。これは、宮崎駿監督が10年ぶりに監督・原作・脚本も務めた長編アニメ映画『君たちはどう生きるか』にも似ている。あまりにも事前情報を出さないことで、超大物の宮崎監督ですら、さすがに不安になり、公開直前になって東宝サイドに「少しは宣伝した方が…」と伝えたというエピソードがある。
福澤氏に同様の不安があったかどうかは不明だが、結果的にそれが奏を功し、成功を収めたことは事実。福澤氏の本作の出来に対する自信がうかがえる。
今後、こうしたプロモーションを行うケースが多用される可能性もあるが、中途半端な作品では、逆に反感を買うことは必至。おいそれとは真似できない芸当だ。