28年前に起きた「BG株事件」
絶命する直前、香苗に何かを伝えようとしていた兼髙。香苗が遺品として残された鍵で貸金庫を調べた結果、兼髙は28年前に起きた「BG株事件」について調べていたことがわかる。それは大手不動産ビッグガリバー社の未公開株が賄賂としてばら撒かれた贈収賄事件。政治家の関与が疑われたが、最終的に起訴されたのは官僚とビッグガリバー社の宇野耕介(河野達郎)社長だけだった。兼髙は事件の黒幕を突き止めようとしたが、その最中に保釈中の宇野耕介が死亡。事件は闇に葬られた。
だが、兼髙は時を経て事件の取材を再開し、宇野耕介の息子にアポイントを取っていたことがわかる。その息子こそ、清家の“ブレーン”鈴木俊哉だった。宇野耕介の不審な死、そして彼の息子である宇野耕介と清家一郎の奇妙な関係。道上親子がそれぞれ不可解に感じた点と点が交わっていく。
印象的だったのは、物語のスピード感だ。60分のドラマにもかかわらず、体感10分にも感じられる展開の速さは主人公である道上香苗というキャラクター性と深く結びついている。彼女は良い意味で慎重さがない。父親が亡くなった日に鈴木と待ち合わせしていたことを知るや否や、自叙伝の取材と称して庁舎に潜り込む香苗。
なぜ自叙伝に鈴木秘書官のことを書かなかったのか、鈴木が宇野の息子だということを知っていたのか、鈴木はどうしてあの日、父と会う約束をしていたのか…等々。息つく間もなくズバズバと質問を投げかける香苗の思い切りの良さが痛快だった。
一方で、あまりの直球さに一抹の不安も。香苗が社会部から文芸部に異動させられた過去や、永田町出禁となっている理由も現時点では明かされていないが、彼女の物怖じしない姿勢を見ていると納得感がある。完全無欠に見えて、どこかに綻びがある。水川あさみのクールビューティーな容姿と人間味を匂い立たせる演技が、そういう役にピタリとハマる。