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怒涛の小ネタを軽やかに消費するテンポ感

『イップス』第1話より ©フジテレビ
イップス第1話より ©フジテレビ

脚本のオークラが盟友バカリズムにあて書きしているだけあって、森野の理屈っぽさ、説明ゼリフが似合う感じは、ネタやバラエティの立ち居振る舞いから感じられるバカリズムらしさと合致する。

イップスもあって事件に対して引き気味の森野に対し、どんどん首をつっこんでいくミコのバランスが、回を重ねるごとにドライブしていくのが楽しみだ。

1話の演出は筧昌也。バカリズムが脚本と出演を手掛けた『素敵な選TAXI』でも演出を担当していた。彼の演出の魅力のひとつに、不意に小ネタを挟み込んでいくところがある。

ミコが見ているテレビにちらっと映る「エクストリーム青汁」のCM。サボっている森野に電話してきた部下・樋口(矢本悠馬)が入る会議室に掲げられた「ひよこ鑑定士連続殺人事件特別捜査本部」の戒名。

事件後のサウナで森野が食事しているシーンなんて、森野が食べているのが電撃ウィッチ真尋プロデュース「ビリビリ生姜焼き定食」であり、にんじんが電撃の形に切られているうえ、その看板もちゃんと作られていて、看板といったら森野の背後には真尋の等身大パネルが飾られているし、食事処のメニューには他にも、「魔法少女のやみつき担々麺」はまだしも「世界の中心で愛をケバブ」「あっち向いてホイコーロー」など、ストーリーに関係なさそうなものまでがずらりと並んでいるという込み入り具合。

数分間のうちに怒涛のように展開する小ネタの洪水に気を取られていると、森野が刑事であるという超重要な情報がもたらされるのだ。おそらくは時間と手間をかけて準備したであろう小ネタを、軽やかにどんどん消費していくそのテンポのよさ。ミコと森野の会話のスピード感とも重なって、気持ちがいい。

終盤で森野が2016年の日付とともにミコのサインが入った小説を開く。そこにはぎっしりと書き込みがなされている。森野とミコは以前にも関係があったのだろうか。また、次回予告の直前に第5話までのサブタイトルをどんどん紹介するのは今まで見たことのないスタイルだ。来週も二人のやりとりを楽しみにしたい。

(文・釣木文恵)

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