「舞台はやっぱり生き物、それを体感してほしい」

国木田かっぱ
国木田かっぱ。道頓堀にあるロックカフェUSA☆GIにて

―――1回目は2023年「超老伝」、2回目は2024年「やっぱり、らもさん、〇〇やなあ」を上演されています。作品選びの基準などはありますか。

「1回目と2回目は『大阪にこんな面白い人がいた、作品があった』ということを伝えたくて、らもさんの短編集などから、みんなが求めてそうな作品を選びました。でも、絶対いつか『こどもの一生』をやろうと心に決めていて、3回目、そのタイミングが来た、という感じです。

『こどもの一生』は、シンプルに、脚本としてめっちゃ面白いんですよ。ちょっとユルくて毒のある、中島らもワールド全開のコメディやと思って観ていたら、だんだん『あれ、めちゃめちゃ怖いやん』となって、最後にはすごい戦慄が走る…という展開。

僕は、生前らもさんとお付き合いがあったんですが、もうずっと笑っているような、アホな話ばっかり。そんな人がこんな怖いことを普段考えてるんや、という落差にもギョッとしました。亡くなって21年経ちますが、改めて、中島らもがこんな怖い駒も持っていたことを知ってもらいたいです」

―――2023年の「超老伝」は、らもさんが、かっぱさんのために書いたラストがあるそうですね。

「『超老伝』は、僕が、らもさんに、1993年の小説『超老伝-カポエラをする人』をお芝居にしたいとお願いしたんです。そうしたら『ええけど、あの本長いから切らなあかんやろ』と、舞台用のラストシーンを書いてくださり、その原稿を直接もらったんですよ。最初は、上岡龍太郎さんが個人的に主催した上岡演劇祭で上演し、その後、何度か再演しています。らもさんがご存命の時にも1回やってるんですよ」

―――なるほど、中島らもさんの作品は、再演しても味わい深いものが多く、「しがむ」という表現がぴったりですね。

「『しがむ』、ぴったりでしょう。らもさんの作品は、2回目、3回目と繰り返し見ても、必ず新しい気づきや面白さが出てくる。今回の『こどもの一生』も、以前観たことがある人でも、前と違う味わいが、じんわり出てくるようになっています。キャストも『この人がこれを演じたらハマる』とわかってはいるんですが、あえてそうではない役をあてたりしています。本人たちは負担になっているかもしれないけど…(笑)。それを超えたところに、面白さがあると思います」

―――中島らも作品を舞台化する難しさなどはありますか。

「らもさんは、すごい量の資料を読んで、それを一気に台本に出すので、難しい言葉や表現が多いんですよね。だから演じる僕たちも、何回も何回もセリフを言うて、落とし込んで、説明できるまでにしないと成立しない。これが大変です。

今回の『こどもの一生』は特に、キャラクター一人一人が抱えている複雑なストレスを、どのようにして描いていくか、本当に難しいです。舞台も小さく、そこに役者が10人同時に立って芝居をするので、多くの人に『無理やろ』と言われましたが、そう言われるほどやりたくなるじゃないですか(笑)。役者たちが狭いスペースでギッチギチのなか、立ち位置をやりくりするところも見どころです。

脚本も演出も、ギリギリまで微調整。ロングランですから、途中で変わるかもしれません。舞台の醍醐味ですよね。制限や縛りと戦い、生まれるものに同じものは一つもない。舞台はやっぱり生き物、それを体感してほしいと思います」

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