「言い方は僕の方がうまかったです(笑)」
映画『寝ずの番』(2006)で中井貴一が驚きのギャグ
―――らもさんと飲みながら芝居論を語り合ったり、芝居についてアドバイスをされたりすることもあったのでしょうか。
「芝居について話すことはほとんどなかったです。『この間食べたとこ、めっちゃまずい店でな、また行くねん』とか、そんな話ばっかり(笑)。世間ではマイナスで評価するものを、チャームポイントとして受け止める人でした。直接教えてもらったわけではないですが、そんならもさんを見て、僕も物事を、角度を変えて、反対からも見ようと思えるようになった。そこは芝居でも、すごく活かせていると思います。
実は、らもさんが僕のアドリブを気に入って、他の作品に反映されているのもあるんです。ある舞台で、僕がおばあちゃんをいじめるシーンで『どうだ、苦しいかババア!』というセリフがあったんです。それが本番、ついついテンションが上がって、『どうだ苦しいかババア、ビーエービーエー(BABA)、ババア!!』と言ったんです。そしたららもさんが『面白い!』と喜んでくれて、よかったよかった、とその場は終わったんです。
それからだいぶ経って、らもさんの小説『寝ずの番』が映画化されたとき(マキノ雅彦監督『寝ずの番』/2006)、観にいった知人に『主演の中井貴一が、かっぱさんのギャグ言うてるよ』と言われて。どういうこと? と思って観たら、中井さんが『BABA(ビーエービーエー)ババア!!』って言うてるんですよ!」
―――中井貴一さんが! まさかのギャグ採用ですね。
「嬉しかったですね。でも『ビーエービーエー』の言い方は僕の方がうまかったです。本家ですから(笑)。思い返せば、20代後半ごろから、数多くリリパッド・アーミーの客演として出演させてもらいました。本当に面白かったですね。作・中島らも、演出・わかぎゑふ、というゴールデンコンビでのお芝居の中で、いっぱい遊ばせてもらった感じです。リリパット・アーミーは2003年、わかぎゑふさんが座長となり『リリパットアーミーⅡ(セカンド)』として活動していますが、今回の『こどもの一生』では、リリパから2人参加します。嬉しいですね」