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「“人事を尽くして役者の名演を待つ”」
黒沢清と濱口竜介…2人の名匠の共通点

写真:宮城夏子
写真宮城夏子

―――以前から東出さんは、濱口監督の映画をご覧になっていて、どんな現場になるか楽しみだったとのことでしたが、実際に一緒にお仕事してみてどんな映画監督だと思いましたか?

「本読みの段階からそれっぽい声を作ってもらい、現場でお芝居をしてもらって、それを撮る。というやり方だったら簡単ですし、滞りがないはずなのに、濱口さんはそうはしない。
本番直前まで感情を入れずにセリフを言わせて、いざ本番。で、初めて感情の乗った言葉を撮ろうとする。しかも、『違う』と思ったら『もう一回やりましょう』としっかり言えるところも凄い。言ってしまえば、非常に博打的なやり方だけど、それは役者を信じて下さっていることの証だと思うんです」

―――黒沢さんや濱口さんが素晴らしいのは、映画的な技法に精通していて、映画を学問として究めると同時に、役者を道具として扱うのではなく、寄り添うようにして作品づくりをされているところだと思います。

「おっしゃるとおりだと思います。僕が感じた黒沢さんと濱口さんの共通点はというと、どちらも凄くロマンチストであるということです。正確に引用はできませんが、黒沢さんはご
著書(『黒沢清、21世紀の映画を語る』)で『監督の役割は滞りなく現場の仕事を終わらせること』と書いていらしたけど、それだけではないと思うんです。

『寝ても覚めても』の後に出演させていただいた『スパイの妻』(2020)の現場では、高橋一生さんや蒼井優さんの言葉を失うような素晴らしい演技を前にして、すごく喜んでいらっしゃるのがわかりましたし、黒沢さん、濱口さん2人とも人事を尽くして天命を待つじゃないけど、“人事を尽くして役者の名演を待つ”みたいな部分があるのではないかなと思います」

(取材・文:山田剛志)

【後編に続く】

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