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映画業界を変革する“同意の形成”

©Adobe Stock

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―インティマシー・コーディネーターの導入によって、具体的にどういった点が改善されたのでしょうか。

「一番大きいのは、監督とキャストとの事前の同意形成ですね。例えば、脚本に「2人は愛を確かめ合った」とだけ書かれていた場合、これまでは、撮影当日まで何をさせられるか俳優に明かされなかったことが多いと聞いています。なので、俳優の中には、当日まで不安を抱えていたり、監督の演技プランになかなか自分の意見を伝えられないという方も多かったようです。

また、クローズド・セットや前貼りといったルールも、これまでは監督やプロデューサーの意識によるところが大きかったんです。なので過去には、「前貼りがあると演技がしづらい」というベテラン俳優の意向を経験の浅い監督が了承して、前貼りなしで撮影を行ったケースもあったと聞いています。

こういった点は、インティマシー・コーディネーターの介入によって大きく変わったのかな、と思っています」

――確かに映画の現場は、監督の権限が大きくて、トップダウンである場合が多いので、インティマシー・コーディネーターが入ることで現場全体の意識が変わりそうですよね。

「そうですね。また、仕事がなくなる不安から、スタッフが監督の強要を止められないといったケースがありました。でも、事前に同意があれば、スタッフも安心して見ていられますし、自分の仕事に集中できると思います」

――ちなみに、事前に締結した同意は現場で覆すことは可能なのでしょうか。

「可能です。というよりも、同意自体、同意書の有無にかかわらずいつでも覆すことができますし、同意書も、日本の映画業界で契約書を根付かせたいという思いから、私があえて採用しているものです。

ただ、撮影当日の同意取り消しは、撮影の中止につながる可能性があることを俳優の皆さんはご存知なので、同意内容に変更を希望されたり、不安を感じたりされている方は事前に連絡をくださいます」

――インティマシー・コーディネーターが浸透することで、俳優さんご自身が仕事を止めてしまう懸念も解消されていくのかもしれないですね。

「そうですね。ちなみに、アメリカでは、撮影当日の同意取り消しの代償として、ボディダブル(替え玉)による吹き替えが認められています。簡単に同意するべきではない、そこには責任も伴うのも事実です」

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