確かな技術が生み出す“柔らかい響き”
中川大志
―――続いては、若手筆頭株の中川大志さんですね。
「中川さんの声は、今回選んだ5人の中で一番きれいな声だと思いました。まず、なにより声の輪郭がはっきりしていますよね。
それに、声の幅が広い。で、まだ若い方なので、音域は比較的高めだけど、下のほうもしっかりと鳴っている。鼻がしっかり使えてるんだと思います」
ーーー鼻、ですか。
「はい。一般的に、声って、喉だけを使うと思われがちなんですが、実際には鼻と口の空間の共鳴(ダブルホーン)を使っています。
で、きれいな声を出す上でカギになるのが、上顎の一番奥にある軟口蓋という器官です。おにぎりを食べた時に海苔くっつくところですね。声を出すときは、ここがペコペコ動くんですが、ここが硬いと鼻声(シングルホーン)になります。要するに、声の輪郭が潰れてしまうんですね」
ーーー確かに中川さんの声は響きが柔らかい印象があります。
「『かきくけこ』と『がぎぐげご』の発声がとてもはっきりしていますよね。これは、鼻と奥舌(舌の根元)がとても柔らかい証拠です。奥舌が柔らかいと、軟口蓋の開閉がうまく行くんですよ。これが、柔らかい響きにつながっているんだと思います」
ーーー中川さんは、誠実な役柄が多いイメージですが、その点も声質が影響しているんでしょうか。
「そうだと思います。中川さんの場合、新人社員や新人店長、弁護士、警察官など、豊川悦司さんが演じたハリソン山中とは対照的なフレッシュな役柄が似合いますね。
逆に、ハリソン山中のような渋い役を演じる際はかなり苦労されると思います」
ーーーちなみに、私たちが中川さんのように柔らかい奥舌を手に入れるには、どのようなトレーニングをすればいいでしょうか。
「『かきくけこ』の連打ですね。舌を鳴らして奥舌を軽く柔らかくしてから、『かきくけこ』を5回言う。これを、徐々に早くしていってください」
ーーー割と手軽にできるんですね。
「そうですね。歯磨きのついでにやっていただけるといいのかなと」