“跳ねる声”が醸し出す絶妙な浮世離れ感
高橋一生
ーーーラストは、ドラマ『岸辺露伴は動かない』の岸辺露伴役が記憶に新しい高橋一生さんです。
「この方の声も私の好みですね(笑)。高橋さんはどちらかというとささやくようなセリフを言う場面が多い印象なんですが、あれだけ声が通って、なおかつ輪郭もはっきりしているのは、かなりの技術の持ち主です」
ーーー高橋さんは、岸辺露伴や、ドラマ『ブラック・ジャック』(2024、テレビ朝日系)のブラック・ジャックなど、漫画のキャラクターを演じることが多い印象があります。この点は声質と関係しているんでしょうか。
「関係していると思います。感覚的ですが、高橋さんの声って、星野源さんの声同様、軽くて跳ねる印象なんです。で、一個一個の音が丸くてギザギザしていないので、クリアに聞こえるんですよね。この声質が、どこか飄々とした雰囲気を醸し出しているのかな、と思います。
ただ、個人的に、高橋さんに一番似合う役は、ミステリアスな役ではなく、ハッピーな役だと思います」
ーーーでは、西島さん同様、声の素質と求められる役が合っていないということでしょうか…?
「そうですね。顔立ちが端正なので、劇中ではダークで物憂げな雰囲気を醸し出していますが、プライベートはとても面白い方なんじゃないかと思っています(笑)」
―――(笑)なんとなく分かる気がします。
「それから、高橋さんのような輪郭のはっきりした丸い声というのは、比較的珍しい声なんですね。特に最近の子どもたちの声って、本当に芯がなくて輪郭が薄めなんですよ」
ーーー輪郭のなさというのは、どういうところからきているとお考えですか。
「一言でいうと、自信のなさですね。一昔前だと、自分の鬱憤や情熱を曲や演技に昇華させようという気概のある子どもが多かったんですが、今の子どもたちはどちらかというと、表現する前から諦めてしまっている感がある。
私もこれまでたくさんの生徒を見てきましたが、最近は自分の限界をはじめから決めてしまって、役柄を自分から狭めてしまっているような子どもが増えている印象があります」
ーーー声からマインドがわかるというのはとても面白いですね。
「そうですね。私は、『発声解剖学』という科学が専門ですが、やっぱり最終的にキモになってくるのは、数値化できない感情だと思います」
ーーー深いお話ですね。ちなみに、最後に、「よく通るささやき声」を習得するには、どのようなトレーニングを行えばよいでしょうか。
「これも、表情訓練あるのみですね。鏡の前で表情を作りながら、これ以上声を出したら輪郭がつぶれる、というポイントを見極める。もう、回数を重ねるしかないです。
今は『タイパ』という言葉も流行っていますが、結局は、しっかりと研鑽を積まないと、声は良くならないということですね」
ーーーローマは一日にして成らず、というわけですね。ありがとうございました。
(取材・文:司馬宙)
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