映画『茶飲友達』は面白い? 忖度なしガチレビュー。高齢者売春クラブをテーマに描いた静かな衝撃作【あらすじ 考察 解説】
2013年に警察庁に摘発された高齢者売春クラブをテーマにした、映画『茶飲友達』が絶賛公開中だ。監督は長編デビュー作で2014年モントリオール世界映画祭に正式招待されるなど、実力派の外山文治監督。孤独死などが問題となっている現代に流れる閉塞感をリアルに描いた本作のレビューをお届けする。(文・寺島武志)
売春クラブ会員の最高齢は88歳
実際の事件を元に描いた社会派群像劇
2013年10月、高齢者売春クラブが警視庁に摘発された。クラブの会員数男性1000名、女性350名、最高齢は88歳。まさに超高齢化社会の日本が抱える老人の孤独死、介護、おひとりさま問題などの不安が反映された事件。本作は、この事件を基にした社会派群像劇だ。
主人公・佐々木マナ(岡本玲)は高齢者専門の売春クラブ「茶飲友達(ティー・フレンド)」を設立。新聞の三行広告に「茶飲友達、募集。」と掲載し、集まってきた男性のもとへ高齢女性を派遣するビジネスを始める。
「ティー・フレンド」に在籍する通称“ティー・ガール”たちの中には、介護生活に疲れた女性、ギャンブルに依存した女性などさまざまな事情を抱える者だ。
ネット広告でもSNSでもなく、新聞の三行広告でPRしている点は、個人的には懐かしい記憶がよみがえる。筆者はかつて、新聞社に勤務していたが、ひと昔前の新聞、特に夕刊紙やスポーツ新聞には、三行広告が必ずといっていいほどあり、その多くが、どこか“いかがわしさ”を感じさせる広告だった。
一方、マナのもとで「茶飲友達」を運営する若者たちもまた、出口の見えない社会の中で閉塞感を抱えて生きている。そんなままならぬ若者や高齢者を束ねるマナは、彼らを「ファミリー」と呼び、擬似家族のような絆を育んでいくのだが…。
高齢者の孤独に寄り添いながら自身も心に寂しさを抱え、ファミリー=“擬似家族”の中に居場所を求める主人公・マナを岡本玲が表の顔と裏の顔を使い分け、見事に演じ切っている。
考えてみれば、「ファミリー」とは、いかにも便利な言葉だ。外から見れば、単なる売春クラブであっても、その言葉によって、その就業員や女性キャストも、全て縛りつける効果があり、共犯者としてしまう。しかしながら、その「ファミリー」には絆など皆無であり、その正体は、金銭を媒介とする闇ビジネス集団だ。そして本作では、その「ファミリー」が跡形もなく崩れていく様までを劇的に描いている。