幸せなデートシーンの裏側

小西桜子
写真:wakaco

―――この映画はフィクションですが実話ベースの物語ですよね。脚本家を目指していた拓也は、デビューが決定して「夢が叶った」と喜んでいたときに、りえと出会ったことをきっかけに全てを失ってしまう。その後、りえの目的や拓也の再生が描かれますが、小西さん自身、この物語をどう感じましたか?

「実話ベースの話だと知っていましたが、主人公視点だけではすべてを把握できないと思いました。だから実話について深く考えるより、実話はあくまで原案として捉え、映画とは切り離して、映画で描かなくてはいけないことを大切に考えたいと思いました」

―――りえを演じて感じたことは?

「映画の内容や役については、十分話し合いをさせていただいたので、あとは現場で内にこもらず、自分自身を外に開いて、自分の中で役作りしたりえを演じ切ろうと思いました。あとは共演の俳優さんとのお芝居で生まれたものを丁寧に演じていく感じでした」

―――前原さんとお芝居をして新たな発見はありましたか?

「拓也とりえは、最初は仲がいいのですが、徐々に敵対するような関係になっていくので、希望より絶望の方が色濃く出てしまうと思いました。でも相反する関係だからこそ言える言葉や見せられる姿があると前向きに考えて、それぞれが自分の中の役への思いをアウトプットしていきました。できるだけ拓也とりえにとって、いい方へ向かうように話し合って演じていたら、この物語の魅力につながっていったので、時間をかけて作り上げて、本当に良かったと思いました」

―――拓也とりえが出会うのは、りえが働いているキャバクラですが、このシーンはとてもリアリティがあって良かったです。このシーンで気をつけたことはありますか?

「映画の前半なので、まだ観客の皆さんに、りえが何を考えているのかは見えていないと思い、なるべく拓也が惹かれる女性としてのりえを意識して演じました」

―――そのあと拓也とりえはデートをするシーンがありますが、とても幸せな様子ですよね。このあたりは前原さんとどのような打ち合わせをしたのでしょうか?

「デートのシーンは最初の方に撮影したので、前原さんと打ち解けるきっかけになったと思います。セリフのない点描シーンだったので、アドリブも多く、結構自由に演じられました。りえを演じているというより、素に近い感じでした」

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