分岐点としての『着飾る恋には理由があって』

『わかっていても the shapes of love』
『わかっていても the shapes of love』©AbemaTV,Inc.

 横浜が演じるキャラクターのグラデーションをあえて二分するなら、基本的に社会をちょっと斜めから見るニヒルな達観系キャラと社会に対して怯える系キャラとに大別できる。『わかっていても』は明らかに前者。『はじこい』もどちからというと前者。『シロクロ』や主演最新映画『正体』は間違いなく後者に分類できる。

 川口春奈と共演したドラマ『着飾る恋には理由があって』(TBS系、2021)の名演も忘れがたいが、同作は、キャラクター性も横浜の演技もグラデーションのちょうど中間に位置するちょうどよさが魅力的な作品だった。

 第1話冒頭、インテリアメーカーの広報を担当する主人公・真柴くるみ(川口春奈)が忙しなくSNSを更新しながら、バスを待つ場面がある。後ろに並んで乗車待ちするひとりにキッチンカーで営業する藤野駿(横浜流星)がいる。なんとなくくるみの様子を見守っている。相手に見ていることを気づかれることなく、さりげなく存在を主張させる。

 この冒頭場面を構築する手並みは、メイン俳優のための取扱説明書を常に意識してきた金子ありさ脚本の醍醐味だ。同じ川口主演、金子脚本のドラマ『9ボーダー』(TBS系、2024)では、相手役の松下洸平の取説を抽出すべく、ぼそぼそしゃべりが特徴的な天然素材系俳優としての松下から上質な部分だけを刈り取ってみせた。

 そうして同作以降の松下は、つるんとすっきりした状態で地上波連ドラ単独初主演作『放課後カルテ』(日本テレビ系、2024)に臨めたのではないかとぼくは思っている。

 同様に『着飾る恋には理由があって』以前以後の視点で考える横浜流星の魅力がある。

 同作以後の横浜にとって明らかなのは、恋愛作品に出演していないこと。良質なロマコメ作品を書かせたら、右にでる者はいない金子脚本のドラマに出演したことで、横浜は恋愛作品に対するひとつの区切りとしたのか……。

 実は、脚本家の金子さんとぼくは今では定期的に若手俳優の情報交換をする仲なのだが、『着飾る恋には理由があって』放送終了後に初めてインタビューしたとき、確か5時間にも及んで横浜流星の魅力を語り合った記憶がある。その長いやり取りで得られたものは、まさに恋愛作品における横浜流星の取説だった。

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