「映画的な魔法のかけ方がわかっているし、映像に独特のセンスがある」
岸監督が刺激を受けている映像作家
―――監督のキャリアについても伺いたいのですが、大学時代から自主制作で映画を撮ってらっしゃいましたよね。映画に興味を持ったきっかけは?
「映画初体験は小学生の時で、地元の映画館でウィリアム・フリードキン監督の『エクソシスト』(1974)と、ブルース・リー主演の『燃えよドラゴン』(1973)の二本立てを観たんです。怖くて鳥肌が立つとか、体が熱くなってくるとか、の感覚があって、スクリーンで観る映画の世界に圧倒されました。『すげぇなあ』と唖然としたことを覚えています」
―――確かに初のスクリーン体験は衝撃的ですよね。どのような映画を好んで観ていましたか? 影響を受けた監督はいますか?
「僕は雑食系なので、なんでも観ていました。若い頃は、その日の気分でアクションを観たり、ヒューマンな映画を観たり、観る映画がコロコロ変わるんですが、感動した作品の映像の断片って残るじゃないですか。何日経っても心に残る、忘れられないシーンになる。そういう映画を撮った監督には興味が湧きますから、名画座で、監督を選んで観に行ってました。
フランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピルバーグ、あげたらキリがない。日本だと野村芳太郎さん。ポーランドのクシシュトフ・キェシロフスキ監督と出会ったときは、圧倒されました。本当にいろいろな作品を観てきました。僕が観てきた作品に何かしら共通点があるとしたら、“人間が出てくる物語”ということくらいです」
―――やはり若い頃に見た作品は影響力があるんですね。
「今は僕より年下の監督作品もたくさん観ています。配信での映画公開など、作品の観られ方も広がっていて、たくさんの若い人が映画業界を目指していると思いますが、コンスタントに監督作を公開している人は限られていて、やはり厳しい世界だと思います。そういう中で白石和彌監督と吉田恵輔監督(吉田恵輔監督の「吉」は「つちよし」)の作品は面白いです。映画的な魔法のかけ方が素晴らしいし、映像に独特のセンスがある。地に足をつけて映画と向き合い、常に挑んでいて、すごいなと思っています」