「攻めているな」
初めて脚本を読んだ時の印象と父の言葉

坂東龍汰 写真:wakaco
坂東龍汰 写真:wakaco

―――この映画は昴と生前の美紀が過ごしてきた時間を映し出すことはないんですけど、2人の仲睦まじい様子を捉えた写真などの断片から2人が築いてきた関係性がヴィヴィッドに伝わるようになっています。

「そうなんですよね。例えば、序盤で関係性を説明して、中盤以降で大切な人が亡くなる、といった構成の映画は少なくないと思うのですが、今回の映画はそうではなくて、冒頭で美紀が亡くなってしまい、昴が喪失と向き合うという話です。観る人の感情を執拗に揺さぶるストーリーではない。でも、その分、リアリティがある。最初に脚本を読んだ時は『攻めているな』という印象を持ちましたし、すごい着眼点だなって思いました」

―――私の父は闘病の末に、4年前に亡くなったのですが、当時は父が写っている写真はいくらでも見れたんですけど、動画が観れなかったんです。昴も美紀の動画を観ようとするんですけど、途中で止めちゃいますよね。すごくリアルだと思いました。そのシーンの少し後に、昴は部屋で食事をしますが、悲しいんだけどお腹は減る、ことのやるせなさがとてもよく出ていたと思いました。

「『ちゃんと食べなさいよ』と言うお母さんの電話の声がする中で、昴がかきこむように食事をする場面ですね。父に話を聞いた時、それが悲しい出来事であると受け入れるまでにすごく時間がかかったと言っていたんです。悲しいけど腹は減る。そりゃ食べるよなって」

―――お父様の言葉を具体的なアクションやセリフでダイレクトに表現するというよりかは、思いをくみ取って、咀嚼した上で演技に反映させるというアプローチだったのでしょうか。

「そうですね。父から聞いたことをそのまま芝居に反映させたということではなくて、演じる上での根拠として、自分の中に事実としてあれば、とても助かるなっていう。だから、本当にすがる思いで聞きました」

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