まさにクドカン版『釣りバカ日誌』! 映画オリジナルのギャグシーンを徹底解説。映画『サンセット・サンライズ』評価レビュー
text by 前田知礼
菅田将暉主演映画『サンセット・サンライズ』が絶賛公開中だ。楡周平の原作小説を宮藤官九郎が脚色。本作は、東京の大企業に勤務する釣り好きの晋作(菅田将暉)と東北の小さな町の人々との交流をコミカルに描いた作品となっている。今回は、そんな本作の魅力を紐解いていく。(文・前田知礼)【あらすじ キャスト 解説 考察評価 レビュー】
クドカン版『釣りバカ日誌』
映画『サンセット・サンライズ』は、東京のエリート会社員・西尾晋作(菅田将暉)が、宮城県は南三陸の港町・宇田濱に移住する「移住コメディ」であり、コロナウイルスが猛威を振るっていたあの頃のあるあるが満載の「コロナ禍ムービー」であり、空き家再生事業を扱った「お仕事ドラマ」であり、震災から10年経った東北の港町を舞台にした「ご当地映画」であり、晋作が借りる一軒家の持ち主・百香(井上真央)との関係性の変化を描いた「ラブストーリー」でもある。
仕事に趣味に土地に恋愛…あらゆる要素が、主人公が大好きな「釣り」を軸に笑いを織り交ぜながら描かれる『サンセット・サンライズ』は、まさにクドカン版『釣りバカ日誌』と言えよう。
東京からやってきた「よそ者」が地元コミュニティに入っていき、その土地の風習(特に食文化)や過去(震災)の記憶に触れて、過疎化が進む地方都市の未来のために町おこし的な活動をする。クドカン作品だと、冴えない東京のJKが海女さんになって地元を盛り上げる『あまちゃん』(2013)や、取材のために避難所に引っ越してきた青年と住人たちとの交流を描いた『季節のない街』(2023)を彷彿とさせる設定だ。
また、映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』(2023)や、ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系、2024)、『新宿野戦病院』(フジテレビ系、2024)などと同様に、コロナ禍、震災、空き家問題といった社会問題を扱っているのも近年のクドカン作品らしい。