映画オリジナルのギャグシーン

©楡周平/講談社 ©2024「サンセット・サンライズ」製作委員会
©楡周平/講談社 ©2024「サンセット・サンライズ」製作委員会

③熊
劇中2ヶ所ほどでかなり唐突に熊が登場する。着ぐるみ感満載な見た目も愛らしく、『木更津キャッツアイ』の映画版『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』(2003)で巨大ロボやゾンビが出てきたのを思い出した。

④芋煮会
「クドカン脚本ドラマのイベント回は神回」という説を個人的に提唱している。例えば、『あまちゃん』(NHK、2013)の海女FES回(153話)、『ごめんね青春』(TBS系、2014)の駅伝回(6話)、『俺の家の話』(TBS系、2021)の家族旅行回(6話)、『不適切にもほどがある!』の八嶋智人回(3話)…フェス、駅伝、旅行、番組観覧などのイベントごとが中心にある回ほど、クドカンの舞台的な勢いは発揮されているように思える。

 今作におけるイベントは、東北の冬の風物詩「芋煮会」だ。晋作が宇田濱で知り合った地元民と東京からやってきた同僚たちとの交流の場として、全員フェイスシールド着用のもと芋煮会が開催される。気まずい空気はやがてピリピリとしたムードに変わって、互いの気持ちがぶつかり、登場人物の感情がピークに達する。そして、酒処「海幸」の店主・ケン(竹原ピストル)の、被災地・東北に生きる人間として想いが語られる名演説シーンになり、さらに晋作が百香に直球で想いを伝える告白シーンになっていく。

 普段言えない感情を吐露できるのもイベントの特有の高揚感あってこそで、この映画のクライマックスの1つだ。そんな直球ストレートで気持ちをぶつけ合うシーンへの照れ隠しかのように、最後は例の熊ちゃんによる「んなアホな!」なフリ回収ギャグで締めくくられるのもまたいい。

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