クドカン脚本の原点と進化
クドカンで「地元」といえば、千葉県木更津を舞台にした地元系群像コメディ『木更津キャッツアイ』(TBS系、2002)がまず思い浮かぶ。上京することなく夜な夜な、友達の営む居酒屋「野球狂の詩」に集まるぶっさん(岡田准一)をはじめとするいつメン男子5人組の姿は、配役の妙もあってかケン(三宅健)をはじめとする『サンセット・サンライズ』の居酒屋「海幸」の常連客たちに重なる。そしてそんな『木更津キャッツアイ』の元ネタとなっているのが、クドカン作・演出の舞台、ウーマン・リブ『熊沢パンキース』(1995、2003)だ。
スナックを舞台にしたワンシチュエーション劇で、常連客の滝さんが未知のウイルスに感染してしまうが、他の客たちは彼が好きだからついつい店に来てしまう。新型ウイルスへの感染の可能性をわかっていながらも人が集まってくる様子は、『サンセット・サンライズ』のコロナ感染者かもしれないよそ者に怯える地方民の様子とは対照的だが、「ウイルス」や「地元」というテーマは30年近く経った本作にも通じるものがある。
『サンセット・サンライズ』は南三陸の架空の都市・宇田濱を舞台にした作品だ。『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系、2000)の池袋、『木更津キャッツアイ』(2002)の木更津、『タイガー&ドラゴン』(TBS系、2005)の浅草、『あまちゃん』(2013)の北三陸、『ごめんね青春!』(2014)の三島…、数々の「地元」を書いてきたクドカンが宮城県というガチの地元を書いた『サンセット・サンライズ』は、「地元」そして「コロナ」を扱い続けたクドカンの集大成ともいえる作品だろう。
奇しくも劇中では、IWGP最終回にマコト(長瀬智也)が叫ぶ「ブクロサイコー!」のごとく、こんなセリフが主人公・晋作から叫ばれる。
「三陸ハンパねぇーーー!!!」
(文・前田知礼)
【作品概要】
『サンセット・サンライズ』
2025年1月17日より全国ロードショー
出演: 菅田将暉、井上真央、中村雅俊、三宅健、池脇千鶴、竹原ピストル、山本浩司、好
井まさお、小日向文世ほか
脚本:宮藤官九郎 監督:岸善幸『あゝ、荒野』『前科者』『正欲』
原作:楡周平「サンセット・サンライズ」(講談社)
製作幹事:murmur 制作プロダクション:テレビマンユニオン
配給:ワーナー・ブラザース映画
©楡周平/講談社 ©2024「サンセット・サンライズ」製作委員会