現代を反映したような世界観…ファン驚きの仕掛けとは? 映画『機動戦士ガンダム ジークアクス』考察&評価レビュー
1979年に放送されて以来、45年以上の歴史を誇る『ガンダム』シリーズ。そのTVアニメ最新作として制作されたのが『機動戦士 Gundam GQuuuuuuX』が公開中。TVアニメシリーズで放送予定の一部話数を、劇場上映のために再構築したものとなっている本作の魅力をネタバレありで紐解いていく。(文・島晃一)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
※本レビューでは映画の内容についてのネタバレがあります。鑑賞前の方はご注意ください。
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【著者プロフィール:島晃一】
映画・音楽ライター、DJ。福島県出身。『キネマ旬報』、『ミュージック・マガジン』、『NiEW』などに寄稿。『菊地成孔の映画関税撤廃』(blueprint)で映画『ムーンライト』のインタビューを担当。J-WAVE「SONAR MUSIC」の映画音楽特集、ラテン音楽特集に出演。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」や『散歩の達人』では、ペデストリアンデッキ特集といった街歩きの企画にも出演、協力。渋谷TheRoomでクラブイベント「Soul Matters」を主宰している。
現代を反映した世界観
本作の主人公は、スペース・コロニーで生まれた高校生の少女、アマテ・ユズリハ(黒沢ともよ)だ。彼女は、戦争難民で非合法の運び屋であるニャアン(石川由依)と出会う。それがきっかけで、賞金を賭けてモビルスーツで決闘する「クランバトル」に巻き込まれ、アマテは、GQuuuuuuX(ジークアクス)のパイロットとして、マチュという名前でエントリーする。
そんな中、アマテは、警察と軍隊から追われていた“ガンダム”と、パイロットの少年シュウジ・イトウ(土屋神葉)に遭遇する…というストーリーだ。
アマテは、宇宙に浮かぶ平穏なコロニーでの生活を偽物のように感じており、本物の重力空、海を知らない。「ガンダム」シリーズといえば、「地球の重力に魂を縛られた人々」などの有名な台詞にもあるとおり、地球ではなく宇宙に出ることで、新たな可能性やコミュニケーションに開かれるという印象が強い。しかし今作では、コロニーでの暮らしに窮屈さを感じる若者、アマテが主人公というのが、まずポイントだろう。
また、スマートフォンが登場するだけでなく、「クランバトル」のゲーム配信的な実況、シュウジの描くグラフィティなどは、現代を反映したような世界観のように思える。ニャアン(石川由依)が難民であり闇バイト的な仕事に従事している点も、現代的な価値観を強めている。こうした要素がTVアニメでどう展開されるか楽しみだ。