「ガンダム」シリーズ×Vtuberの融合
登場人物たちが乗るモビルスーツの描写にも新しさを感じた。映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021)では、モビルスーツを怪獣映画のように見せるなど兵器としての恐ろしさを再認識させられたが、今作の戦闘で1番ハッとしたのは、首の部分が真後ろを向いた後、ボディ部分も勢いよく180度回転して向き直すショットだ。モビルスーツは人間を模したロボットではあるものの、その機械性をあらためて強調しているように思えた。
ところで、本作では、無機的なコロニーの外壁に突如カラフルなグラフィティが見える場面がある。このシーンで思い出したのは、本作の挿入歌「もうどうなってもいいや」を歌うVtuber・星街すいせいが、2024年に放ったヒット曲「ビビデバ」のMVだ。
アニメの世界と実写の世界、異なる2つの世界を、違和感を残したまま架橋し乗り越えようとする「ビビデバ」のMVや、実際の渋谷の街の中にグラフィックアニメーションが描かれる「AWAKE」のMVなど、星街すいせいの一連の活動を連想させる。
「ガンダム」シリーズでのVtuberの起用ということで、驚きをもって受け止めた人もいるかもしれないが、グラフィティなど異なる絵柄が共存するこの映画での彼女の起用は、こうした活動を踏まえると話題性以上の納得感がある。
違和感を残したまま2つの異なる世界を架橋しようとしたMV「ビビデバ」の歌手、星街すいせいの起用の意義をより強く感じさせるのは、本作の前半と後半で、まるで別世界のようにキャラクターの絵柄が変わるからだ。
そして、絵柄の変化とそれによる異化効果は、作中で絵柄が変わる鶴巻和哉監督の過去作アニメ『フリクリ』(2000)を連想させられる。