一年戦争の仮想戦記が織りなす展開
驚くべきことに、本作は、宇宙世紀0079年、サイド7のコロニーにジオン軍が潜入する場面から始まる。そして、仮面の男シャア・アズナブル(新祐樹)が、連邦軍のガンダムと強襲揚陸艦ペガサスを奪取する。本作の前半は、ファーストガンダムと呼ばれる1979年放送の『機動戦士ガンダム』の1話をなぞりつつ、ifストーリーが繰り広げられるのだ。
『機動戦士ガンダム』では主人公アムロのライバルであるシャアが、ガンダムに乗り躍動する。特に、オリジナル版でシャアの代名詞とも言えるザクのキックを、ガンダムで披露するシーンには、興奮を隠しきれなかった。パンフレットのインタビューによれば、本作の脚本と絵コンテを、庵野秀明が担当したそうだ。
その後も、まさにパラレルワールドとも言うべき展開が続く。劇中、シャアは、ララァではなくシャリア・ブル(川田紳司)と、人類の革新とされるニュータイプとしてバディを組む。
ペガサスはソドンと改名されシャアとシャリアの乗艦になる。戦争は連邦軍ではなくジオン軍が勝利するが、シャアはゼクノヴァと呼ばれる現象の光に包まれ、行方不明になってしまう。
鶴巻監督は、『機動戦士ガンダム』の舞台である一年戦争の仮想戦記として今作を構想したそうだ。シャアの声優が、長年演じてきた池田秀一から新祐樹に交代したのも、仮想戦記という印象をより一層強めている。そして、一年戦争終結から年月が経った宇宙世紀0085年に、映画の後半部分、マチュたちの物語が始まるのである。