現代社会と村社会の類似点

深川麻衣 写真:武馬怜子
深川麻衣 写真:武馬怜子

―――本作は、村社会の濃密な人間関係を描いていますよね。近所付き合いが密で、他人の家のこともすべて筒抜けという描写がありましたが、これは意外と“田舎あるある”なのではないかと思います。深川さんは静岡出身、若葉さんは東京出身ですが、ご近所付き合いなどで、距離感が近いなど感じた体験はありますか?

深川「実家では、親戚とかではない近所に住んでいるおばあちゃんが『野菜がいっぱい獲れたからお裾分け』と言ってお野菜を来てくれるんです。知らない方が突然、家に来るみたいなことはたまにあります(笑)」

若葉「東京だと、『誰?』と怪しんじゃうかもしれないよね」

深川「そうですよね。でも地元では、お裾分け、助け合いとかで巡っていく付き合いもあるんです。実家に帰ると今でも回覧板を回して情報を共有したり、町内会のイベントがあったりしますから、横の繋がりで助け合っていくのが当たり前という地域もあると思います。

本作では、その付き合いの深さが歪んでいくので、そこを違和感や怖さとして描いていますけど、近くに住んでいるから助け合うという感覚、個人的には共感できました」

―――若葉さんはありますか?

若葉「僕の実家は大衆演劇の一座で、一座ならではのしきたりもあったので、とても閉鎖的な空間だったと思います。僕は平成生まれですが、昭和の時代から続くしきたりもあったし、表に出てきてないこともたくさんあったと思います」

―――田舎暮らしだからというわけではなく、どういう環境でもこの映画のような閉鎖的な世界は存在すると。だから共感もあるのかもしれないですね。

若葉「例えばSNSでも、顔や名前を出さずに無責任な1人がついた嘘や確実性のない意見を誰かが拡散して大きな声になっていったりするじゃないですか。それを広めてるのがごく少数だとしても、それがあたかも”世間の声”のようになる。そして標的になった人は死ぬまで叩かれる。顔が見えなくなったことで本来人間という生き物がもつ残虐性が出てきただけのような気もしますが、それはもう田舎に住んでいようが、東京に住んでいようが関係ない時代になったなと思います」

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