日本・韓国の贅沢すぎるキャスティング

©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会
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「韓国の島パート」がまた、興味深い展開を呼ぶ。

 島で知り会った日本人女性、志穂(内田有紀)は、地元住民と食品健康施設を営んでおり、日本で人気ラーメン店を営んでいた夫とは、コロナ禍における経営不振が原因で夫婦仲が悪くなり、別れ、この島にやってきたという。

 五郎から「いっちゃん汁」の話を聞いた千秋は、何かのヒントになればと、島で採れた昆布と椎茸を渡し、日本にある夫のラーメン店「さんせりて」に行ってみてほしいと、五郎を韓国本土へと送り出す。

 本土にてパスポートを見せるため、韓国の入国管理官と落ち合うわけだが、なかなか現れないため、目の前の食堂に入る五郎。そこに現れた入国管理官役は、なんと『梨泰院クラス』(2020年)で人気を博したユ・ジェミョン!

 フランスでは、同国と日本を行き来して活動している杏を配し、韓国ではユ・ジェミョンと、それぞれのスポットで贅沢なキャスティングが見られるのも、この映画の魅力である。特に、韓国料理『ファンテへジャンク(ファンテ=スケソウダラを乾燥させたもの)』を美味そうに食べる五郎と、食欲を強かに刺激されながら五郎が完食するのを待つユ・ジェミョンとのクロストークは、クスリと笑える。

 さて、物語は後半。五郎は、志保から勧められた食材とエソの煮干しを持って、ラーメン作りを辞めて、チャーハンしか出さない店となった『さんせりて』の店主(オダギリジョー)の元を訪れる。『いっちゃん汁』に近いであろうスープの再現を頼むことになるのだが、店主と五郎は、何かが足りないのではと悩む。

 結局、『いっちゃん汁』とは、千秋の祖父が「一郎」という名前で、亡き母が勝手に『いっちゃん汁』と名付けていたことが判明する。五郎はさらに、魚出汁の素材が、長崎の『エソ』ではなく、韓国の『ファンテ』であると直観する。

 五郎もかつて食した『ファンテ』を取り寄せることで、見事、『いっちゃん汁』は完成。スープを一郎と千秋の元へ届ければ、めでたしめでたし…なわけだが、そうは問屋が卸さない。

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