「感情を置いて言葉そのものを大切にする」映画『雪の花 ―ともに在りて―』三木理紗子が語る本作への思い。単独インタビュー
巨匠・黒澤明の助監督を務めてきた小泉堯史監督が手がける映画『雪の花 ―ともに在りて―』が現在公開中。本作は、実在した町医者・笠原良策が、天然痘の治療に命をかける物語となっている。今回は、本作に出演する三木理紗子にインタビューを敢行。初挑戦となる時代劇や民謡のシーン、小泉組の現場についてお聞きした。(取材・文:タナカシカ)
「感情を1度置くことで、言葉そのものを大切にできる」
初挑戦となった時代劇で感じたこと
―――本作は、三木さんにとって初めての時代劇だったと思います。まずは、脚本を読んだ時の感想から伺えますか?
「時代劇というお話をいただいた時は、『どんな内容なんだろう』、『もしかしたら難しい話なのかな』と思っていました。でも、読み始めてみると、町医者の笠原良策(松坂桃李)さんが、まだ医療技術が発展していない江戸時代の日本で、天然痘の治療に命をかけて取り組んだというお話が事実だということに驚き、面白くて読む手が止まらなくなりました」
―――ご自身が演じるキャラクターの把握という以前に、物語として引き込まれたんですね。本作で演じられた“はつ”をどうように解釈、イメージし、準備をしましたか?
「はつという役は、原作にないキャラクターだったので、私自身も『どういう風に演じればいいんだろう』と、悩んだ部分がありました。でも小泉堯史監督から、『等身大のまま演じてほしい』と言っていただけて、あまり作りこみ過ぎず、その場で感じたことを自然に表現しようと心掛けました。
事前に、資料となる映画や本などをいただいていたので、それらを通じて、どんな時代だったのか、天然痘の背景などを自分なりに勉強して撮影に臨みました」
―――クランクイン前に、小泉監督とディスカッションしたり、役や作品の世界観についてお話しする機会があったんですね。
「そうですね。事前の本読みの時、最初は自分の中で感情を作ってシーンに臨んだのですが、小泉監督に『一度、その感情は置いて、セリフだけを淡々と読んでみて』と言われたんです。その際に、自分なりの解釈で感情を作るのではなく、相手のセリフや芝居をしっかり見て、その場で感じたものを表現すればいいんだと気が付きました。現場では、そこで学んだことを強く意識して演じました」
―――感情を抜いて本読みをするっていう経験は、三木さんにとって新鮮なものだったのではないでしょうか?
「そうですね。本読みだからそこ、感情を1度置くことができる。言葉そのものを大切にすることができると学べ、これからの現場でも活かしていきたいです」
―――そのように発声したセリフをカメラで切り取られ、スクリーンに映し出される。完成した作品を見て、ご自身のお芝居は率直にいかがでしたか?
「フィルム撮影のため現場にモニターが無く、自分がどんな風に映っているのかまったくわからない状況でした。だからこそ、試写会で初めて映像を見たときに、いろいろな思いがこみ上げてきました。撮影が終わった後に、監督から『すごく良かったですよ』と言葉をいただけたときは、本当にホッとしたのを覚えています」