「俳優としてどこまで画面サイズを計算するべきなのか」
作品に則した視線の動き
――教室の最後尾に座る池永が周囲に視線を遣る、その視線の遣り方が何の混じり気もなく的確だなと感じました。視線をパッと移動させるだけでキャラクター性を理解させる無駄のなさとでも言いましょうか。視線移動の演技の時はどんなことを考えながら演じるものですか?
吉野「撮影現場である教室が薄暗く、ホラー映画の雰囲気がありました。そうした現場の空気を踏まえて、恐怖体験に見舞われた時のリアルな気持ちを意識しました。池永本人が感じる「えっ」という驚きのニュアンス。それをうまく混ぜながら視線を動かしています」
――ホラー映画の主人公のようにリアクションするということですか?
吉野「そうです。池永が直面する修羅場など、主人公の感情と表情を通じて、観客の皆さんにもホラーチックな場面を擬似体験いただけないかと考えました」
――撮影中にモニターチェックはしましたか?
吉野「今回の現場では、あまりモニターチェックはしてないです」
――というのも画面サイズを意識して演技しているように見えたからです。教室内の池永はバストサイズで写ることが多いですね。一方、下校場面などのロケーションでは、電車に乗るスリーショットが印象的でした。過去作だと『MY(K)NIGHT マイ・ナイト』(2023)でラーメン屋のカウンター席で並ぶ場面など、ツーショット、スリーショットの吉野さんに対してカメラが正対する瞬間、ふわりと映画的な空気感が画面を支配するように感じます。
吉野「最近、カメラの画角を少し意識するようになってきました。俳優としてどこまで画面サイズを計算するべきなのか。「今、自分はここまで写っているんだ、それならもう少し大袈裟に動かしてもいいな」という具合に考えるようになりました」
――視線移動もまさにサイズ感を意識したものですか?
吉野「そうですね。細かい目の歪みや口を半開きにする動作など、細かなポイントをしっかり画面におさめて、見せ所にすることを心がけています」