『ベルサイユのばら』考察&評価レビュー。うっとりする仕掛けが盛り沢山…現代に蘇った50年以上前の名作を今観るべきワケ
text by 近藤仁美
劇場アニメ『ベルサイユのばら』が全国の劇場で公開中だ。原作は、1972年から1973年にかけて「週刊マーガレット」(集英社)で連載された、池田理代子による不朽の傑作コミック。今回は、装い新たに映画化された本作のレビューをお届けする。(文・近藤仁美)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:近藤仁美】
クイズ作家。国際クイズ連盟日本支部長。株式会社凰プランニング代表取締役。これまでに、『高校生クイズ』『せっかち勉強』等のテレビ番組の他、各種メディア・イベントなどにクイズ・雑学を提供してきた。
国際賞「Trivia Hall of Fame(トリビアの殿堂)」殿堂入り。著書に『クイズ作家のすごい思考法』(集英社インターナショナル)、『人に話したくなるほど面白い! 教養になる超雑学』(永岡書店)などがある。
目を悦ばせる仕掛けの数々にうっとり
池田理代子の名作漫画『ベルサイユのばら』が、初連載から50年以上を経て新たに映画化された。物語の始まりは、革命前夜のフランス。将軍家を継ぐため男性として育てられた女性・オスカル(CV:沢城みゆき)と、その従者・アンドレ(CV:豊永利行)、実在の歴史上の人物マリー・アントワネット(CV:平野 綾)らを中心に、華やかな物語が展開される。
今回、『ベルサイユのばら』を観て最初に思ったのは、「この作品に出てくる“総花びら数”を知りたい!」だった。本作では、原作さながらに登場人物の周囲に花が咲き乱れ、場面転換でもしばしば花弁が舞う。また、映像の背景には西洋のミニチュアールよろしく美麗な柄が描きこまれ、目が忙しがりながら悦ぶのが自分でもわかるほどだった。
ただ、特段『ベルばら』ファンでなく、ストーリーがしっかりきっちり語られるのが好きな方は、映像というよりも一枚絵の連続とみなす方が楽しめるかもしれない。長い原作を2時間強に縮めた結果、様々なエピソードがセリフなしの動く絵画風に挿入されていくため、原作未履修の場合「詳細はわからないけど、みんな色々あったんだな」といった感想になる。