登場人物の感嘆表現に注目

©池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会
©池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会

 また、本作の観やすいところは、一大叙事詩ともいえる原作を、“愛”という一点で切り取ったことだ。登場人物たちは、愛ゆえに悩み、愛ゆえに行動する。そのため、鑑賞者はたびたびもどかしさを禁じ得ず、キャラクターたちをつい応援してしまうのだが、作中ではどの登場人物も容赦なく時代の波に呑まれていく。そこがまた切なく、「この後どうなっちゃうの?」と(流れを知っていても)手に汗握る展開に繋がっていたように思う。

 余談だが、私は今回、登場人物の感嘆表現がどのように処理されるのかも確認したくて鑑賞した。原作では、登場人物がしばしば「ああ……」と心の声を漏らしたり、場面によって神話風の服装に変わったりするのだが、それらのシーンは、人によっては味付けが濃いと感じるかもしれなかった。そのような部分を、どのように違和感なくライト層に届けるのか。そこが気になっていた。

 結果として、それらの場面はキャラクターたちの会話のなかにごく自然に吸収されていた。「ここぞ」という場面で使われ、「いまが見どころ!」というときに絞って取り入れられていた。観やすく、そして美しく、漫画を映画化する意義がたっぷりと感じられる構成だった。

(文・近藤仁美)

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【了】

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