「満を持して出演をお願いした」映画『誰よりもつよく抱きしめて』内田英治監督が三山凌輝×久保史緒里の魅力を語る
text by 司馬宙
「好きなのに触れられない」―。そんな普遍的な苦悩を、強迫性障害の主人公を通して描いた新堂冬樹の小説『誰よりもつよく抱きしめて』が2月7日(金)より公開中。今回は、監督を務めた内田英治氏にインタビューを敢行。コロナ禍で表面化した空気の分断やキャスト陣の魅力について伺った。(取材・文:司馬宙)
コロナ禍で表面化したフィジカルな脆さ
―――本作は2005年に出版された新堂冬樹さんの同名小説が原作になっています。20年近くを経て制作に踏み切ったきっかけを教えてください。
「決定打はコロナ禍ですね。原作自体は以前から楽しく読んでいたんですが、世界中の人々が恋人や家族ともソーシャルディスタンスをとらないといけない状況が見ていて本当に辛くて…」
―――確かに、「好きなのに触れられない」という状況は、強迫性障害による潔癖症を患っている主人公・良城の境遇にとても似通っています。
「そうなんですよ。加えて僕自身、コロナ後に自律神経失調症になったという経験も大きかったですね。
それまでの僕は、酒向芳さん演じる良城の祖父のような昔気質の人間で、大抵の体調不良は『気持ちの問題』で片付けていたようなタイプだったんです。でも、僕自身、自律神経を崩して、めまいなどの実際の症状をとてもフィジカルな問題として痛感するようになった。で、改めて原作を読み返して、実写化に踏み切りました」