兼業俳優が発揮する圧倒的集中力
―――本作の主演は、俳優でありながら、BE:FIRSTのメンバーとしても活躍中の三山凌輝さんと、乃木坂46の久保史緒里さんが務められています。お二人を起用された理由を教えてください。
「久保さんは、『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』(2023)にもご出演いただいたのですが、個人的に若手有数の俳優さんだと思っていて、今回満を持してお願いしました。
三山さんは、以前プライベートで知り合い、お仕事でご一緒したいと思っていました。お二人ともミュージシャンなので演技の勘がいいんです」
―――確かに、内田さんの映画には、『ミッドナイトスワン』(2020)で主演を務めた草彅剛さんをはじめ、ミュージシャンが出演されることが多い印象です。
「ミュージシャン出身の俳優は、とにかく集中力が優れている印象ですね。なにせ彼らは多忙なので、専業俳優が10時間費やせるタスクを、2時間でやり切ってしまわなければならない。
ただ、時間が圧縮されている分、尋常ならざる熱量で取り組まれるんです。このあたりの突破力は、専業俳優にはない魅力だと思います」
―――本作にはもう1人、2PMのファン・チャンソンさんが起用されています。チャンソンさんは、ハン・サンヒ監督の『忘れ雪』(2015)以来、約20年ぶりに日本映画にメインキャストとして出演されるとのことですが、大変だった点はありますか。
「そうですね。チャンソンさんの場合、アメリカ流の『メソッド演技法』(役柄の内面を深く掘り下げることでリアルな演技を行う技法)がベースにあるので、他の役者とのチューニングで少し苦労しましたね。
あと、韓国の方の場合、日本人のキャストやスタッフのように、場の空気を察して行動する阿吽の呼吸が通用しない。なので、現場では普段より積極的なコミュニケーションを心がけました」