心が求めるものと感覚が一致しない登場人物たち
本作で一貫して描かれているのは、心が求めているものと体の感覚が一致しないことで起こる人間関係のままならなさ。お互いを大切に思っているにもかかわらず、決して触れ合うことができない良城と月菜。家で夜ごはんの鍋を食べているとき、自身の不注意で月菜に火傷を負わせてしまうが、良城は彼女の体に触ることをためらってしまう。
さらに、月菜が「夢の扉」で出会った謎の男イ・ジェホン(ファン・チャンソン)がストレートな言動で彼女との距離を縮めるなか、良城は一向に改善しない症状に焦りの感情が生まれていく。
月菜も良城の強迫性障害をどうにかしたいという一心で、クリニックへの受診を勧める。しかし、良城がクリニックの合同カウンセリングで同じ症状を抱える村山千春(穂志もえか)と共感しあっているのを見て、心がざわついてしまう。
それはきっと、自分が彼の苦しみを真の意味で理解できているか不安だからだろう。彼/彼女を幸せにできる人がほかにいるのではないか。互いのことを慮るほど、その想いは心の内側にまで滲んでいく。
お互いが大切に思い合っていることは観ている人の目からも十二分に伝わってくる。それなのに、ふたりが望んでいる現実が心の距離と一致することはなく、その揺らぎはやがて彼らの心にすれ違いを生んでしまう。