水川かたまり「あ、これが正名グルーヴなんだ」
―――正名さん演じる森口は、劇中でここで口にするのが憚れるくらい、ドギツイことを関谷に言いますよね。それでもチャーミングな部分が見えるのは、なぜなのでしょうか。
正名「そう見えたのならすごくよかったです。とにかく森口はずっと同じことを連呼しているので、気を付けないと、お客さんから『いい加減にしろ』って思われてしまう。ただ、だからといってファニーな部分を誇張するという意識もなくて。そもそも脚本に書かれているセリフがちょっととぼけた味わいがあるんです。
今回、個人的に好きなセリフがあって。森口は、大事な話をする前か後に「関谷一平よ!」って言うんですよね。ただフルネームで呼ぶだけではなく、「関谷一平さんよ!」とかでもなく、「関谷一平よ!」。本気なのか、ふざけているのか、全然わからない(笑)」
水川「なるほど。正名さんがお話しになるまで意識したことなかったけど、水口というキャラクターを表現する、絶妙な言い方だし、ワードという感じがしますね」
――― インタビューの初めに、今回お2人は現場で初めて顔を合わせたと伺いましたが、“はじめまして、じゃあ本番カメラ回ります”で、あのグルーヴ感って生まれるものなのでしょうか?
水川「森口が僕の部屋に現れて「うわぁ」っていうところから冷蔵庫を叩きつけて首しめるシーンが初日だったんですけど、僕はあそこで正名さんにグルーヴを叩き込まれたと思っていて…」
正名「ええ! 本当ですか?」
―――この2人のシーンはこういうグルーヴなんだぞ、と。
水川「はい(笑)」
正名「そんな雰囲気、発していましたか?(笑)」
水川「発してました(笑)。もちろん脚本を読んだ時点で、森口がぶっ飛んだキャラクターであるというのは理解していたつもりなんですけど、撮影初日に目の前に立ち現われた時に『あ、これが正名グルーヴなんだ』と」
正名「恥ずかしいな(笑)」
―――正名さんがリズムを作っていった、という側面もあるのですね。
正名「物語上、明らかにこっちが勝手にちょっかいを出すわけですが、そうなると、どの角度で、あるいはどのタイミングでちょっかいを出すか、といったことはやっぱり考えるわけですけど。モードとしては、息子にちょっかいを出すと言いますか、他人に対してというよりかは、心のどこかで『怒った顔もかわいいね、お前』みたいな距離感でやるとうまくいくんじゃないかなと、実は考えていました」
―――ああ、だから森口はチャーミングな印象を与えるのですね。初対面のお二人の間に張られた壁を正名さんが破ってくれたと。
水川「いきなり首根っこつかまれて、「許そう」って(笑)」
正名「脚本上そうですからね。いきなりですもんね(笑)。そこからかなりのやり取りがあって、やっと冷静になるみたいな。でも現場は暑かった…」
水川「夏の終わり、9月ぐらいだった気がしますけど、まだ全然暑くて。だらだら汗かきながら取っ組み合いをしてたんで、それも相まって強制的にガッと壁が取り払われた気がします」