ネタ作りシーンの静かな説得力

死に損なった男
©2024 映画「死に損なった男」製作委員会

 そんなお笑い描写でもう1つ気になったのが、劇中に登場する謎のお笑い賞レース『ネタバトル2024』だ。

 劇中に何度も登場するポスターに書かれている「2日でスターになりやがれ!」というコピーの通り、各地方での予選大会と決勝の生放送をたった2日間で行う前代未聞の賞レースとなっている。優勝賞金はR-1と同じく500万円、客席最前列にはバインダーを持った審査員(彼らみたいな審査員が各地方に派遣されているはず)、そしてなんと、舞台下手には出場者の名前が筆で書かれた寄席みたいなめくり台が置かれている。

 参加芸人の座付きの構成作家にすぎない一平が、ピラティスのファンである綾(唐田エリカ)を予選大会に招待できる権限を持っているのも興味深い。考えれば考えるほど謎が深まる賞レースだが、先日発表された日本テレビの新たな賞レース『ダブルインパクト~漫才&コント二刀流No.1決定戦~』のように、昨今どんな賞レースが生まれても別に不思議ではない。

「一平が手伝うコンビが『ピラティス』で、ヒロイン綾の職業がヨガインストラクターなの気になるだろ!」
「急にリサーチ頼まれる作家な割には、一平いいマンション住んでんな!」
「ネタ作りの過程が台詞オフの点描なのちょっとずるくないか?」
「後輩の構成作家なのに、見た目と服がおじさんすぎるだろ!」
「三浦マイルドがなんで格闘技教えてんだよ!」

 と、文字通りツッコミどころも多い作品だが、それも含め愛おしい『死に損なった男』を、ひ劇場でご覧いただきたい。

(文・前田知礼)

【作品概要】

出演:水川かたまり 正名僕蔵 唐田えりか 喜矢武豊 堀未央奈 森岡龍 別府貴之 津田康平 山井祥子
監督・脚本:田中征爾
コント監修:板倉俊之
音楽:Moshimoss
撮影:ふじもと光明(JSC)
照明:江川斉
美術:中川理仁
録音:高島良太
プロデューサー:藤本款 宇田川寧 田口雄介
製作プロダクション:ダブ
製作幹事・配給:クロックワークス
2024年|日本|109分|シネマスコープ|5.1ch
©2024 映画「死に損なった男」製作委員会
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