青木柚「良いバランスで出来た」
撮影現場で過ごしたかけがえのない時間
―――この映画で福地さん演じる優佳は、聡太郎との出会いによって内面的に変化していきますが、外面的にも変化していきます。具体的には、古着屋で洋服を買うシーンを境に髪型がポニーテールに変わりますね。
福地「そうですね。私自身、服や靴、髪形もそうですが、身につけるものひとつで、気持ちに大きく影響をあたえてくれるというのは、共感できました。優佳が聡太郎と一緒に過ごし、お洋服を選んで、ご飯を食べたりする、なんでもない時間がとても愛おしく光って見えました」
――― 一方の青木さんは近年の御出演作では『不死身ラヴァーズ』(2024)や『はだかのゆめ』(2022)に顕著ですが、出来事を一歩引いた地点から静観する役を多く演じている印象がありました。が、今回の作品では躍動的なお芝居をなさっています。今回、どのように役を解釈してお芝居に臨みましたか?
青木「聡太郎は自分とすごくかけ離れているとは思っていなくて、役に入り込むのにすごく苦労したということはあまりなかったかもしれません。聡太郎の生まれ育った場所に戻りたい、馴染みの公園に行ってみたいという、純粋な衝動と言いますか、内側から湧き出てくるエネルギーは自分自身にもあるので。おっしゃってくださったように、確かに落ち着いた役を演じることも多いですけど、今回マインドをガラッと変えて臨むということはなく、良いバランスで出来たかなと思っています」
―――今回の役は青木さんがもともと持っていたものがよく出たキャラクターだったのですね。テンションに違いはあるにせよ、どこか浮世離れした、天使のような役柄であるという点では、今回の役も先ほど例に挙げた2つの作品で演じられた役も共通している気がします。
青木「確かにそういう役は多いですね。生きてるって思われていないのかもしれません(笑)」
―――福地さんは、青木さんとご共演されてどんな俳優さんだと思いましたか?
福地「役に対してもそうだと思いますが、人との関わりの中で素敵なところがたくさん見えてくる、誠実さや、真剣さがあると思います。印象に残っているカットはたくさんあるのですが、2人の場面だけでいうと、地図をなぞっていくシーンは脚本には会話の内容までは書かれていなくて、基本その場で感じたことや、思い出から出てきた言葉と共に地図に線を引いていって。聡太郎と優佳が過ごした時間と、撮影現場でのチームの皆さんとの一体感が、映像に乗っかっている気がして、すごく好きだと感じました。柚君の場を和ませる力もあったと思う。地図に絵を描いていたら「ええ…ちょっと下手だね(笑)」って言われたり」
青木「少し個性的な絵をお書きになっていたので(笑)。このシーンは今、福地さんが話してくれたように、お芝居をしていて『一緒に色んなところに行ったんだな』と自然に思えたといいますか、シーンの趣旨に沿った演技をしなければいけないというわけではなく、すごく自然に出来たのがすごく良かったです」
福地「撮影中もちゃんとコミュニケーションがとれていたから、撮影中に思い出を振り返っていても、自然に笑えるというか、無理にやろうとしなくていいっていう状況を柚君は作ってくれたと思っていて。ありがたかったですね」
―――最後に今回の現場でお2人が役者として学んだことや発見したことがあれば、教えてください。
福地「2人がご飯を食べるシーンは、長回しで撮影したのですが、本当にいろんなことが起きてるんです。優佳と聡太郎のお互いの思いが交差していて、その場で起こっていることをそのまま捉える、という楽しさに触れることができた時間でした」
青木「今回の作品では、現場の土地とお芝居の結びつきを強く感じられたのがすごく良かったです。普段はどうしても都内での撮影が多いですけど、東京は東京で、場所に根ざしたお芝居ができると思うので、今後にも生かしていけたらいいなと思います」
(取材・文:山田剛志)
福地桃子さん
スタイリスト:Kazuhide Umeda
ヘアメイク:Moe Hikida
青木柚さん
スタイリスト:Moyashi Nakamura
ヘアメイク:Toshiko Hachiro
【関連記事】
「作り手目線ですごくいい設定だと思った」映画『死に損なった男』主演・水川かたまり、共演の正名僕蔵、対談インタビュー
「音楽と演技が影響を与え合っている」劇場版『トリリオンゲーム』シシド・カフカが語る制作の楽しさとは? 単独インタビュー
最も面白い坂元裕二の脚本ドラマは? 台詞が心に刺さる傑作5選。テレビ史に残る名作揃い…珠玉の作品をセレクト
【了】