二層構造の実験作
まずは本作の内容について簡単に説明しよう。物語の主人公は、たけし演じる殺し屋・ねずみ。彼は、謎の男Mからの依頼で闇金経営者や暴力団組長など数々の大物を手にかけてきたが、ある日、行きつけの喫茶店で警察に捕まってしまう。
ここで登場するのが、浅野忠信と大森南朋が演じる刑事・井上と福田だ。激しい尋問にも一向に口を割らないねずみに業を煮やした2人は、過去の全ての罪のもみ消しを見返りに麻薬組織への潜入を持ちかける。
以上が、前半27分のシリアスパートのあらすじだ。なお、後半のコメディパート(「SpinOff」)では、前半のこのあらすじをたけし流のお笑い(殺しのターゲットを間違える、潜入先の麻薬工場で突然椅子取りゲームがはじまるなど)を盛り込んだ上でリフレインされるという構造になっている。いわば、前半が「フリ」に、後半が「オチ」になっているというわけだ。
とはいえ、先にも述べたようにこのパートのギャグはベタすぎて人によっては全く笑えないだろう。それどころかシーンによっては俳優が笑ったりたけしが自身のギャグ「コマネチ」をかましたりしているシーンも盛り込まれており、やぶれかぶれ感が拭えない。
なぜ北野武はよりにもよってこんな演出を盛り込んだのか。この謎を解くには、北野武の作家性についてより深く考えなければならない。