光る神谷浩史の演技センス
前作の唐傘といい今回の火鼠といい、日本人ならどこかで目にして耳にしてきた伝統的語句を、映像も音楽もそして効果音さえ令和な背景を持たせてます。未知なるモノノ怪と相対するストーリーはシンプルなものであれど、あの時代の大奥という特殊な環境に置かれる人間模様を、老若男女それぞれのキャラクターにカメラを置いて描き切る。一種の謎を追い詰めてゆくミステリーとしても充分に楽しめる快作でしょう。
ボクにとっては作品スタッフもいろいろ親近感を持って観られました。薬売りという主演声優を務めた神谷浩史さんは、今や当代切っての実力派人気声優。ちなみに「モノノ怪」の方が先なのですが、ボクは今から10年ほど前にTVシリーズアニメ「電波教師」で彼に主人公・鑑純一郎を演じてもらってます。ゲームオタクでこんなタイトルの番組中一度も教壇に立たないような先生を、見事なポジティブ感覚で演じ切ってくれました。
それから考えると、「モノノ怪」主人公・薬売りのキャラクターはもしかしたら真逆のタイプ。でも神谷さんがすごいのは、キャラがどっちに向こうがそのポテンシャルの高さは変わらなく感じられること。
話はズレますが、声優の凄さは声だけで表現してる演技なのに、おそらくそれが音声部分だけではないことです。息づかいとかはもちろんですが、マイクの前での身体を動かす演技から一挙手一投足まで、体幹から隅々まで行き渡っているというか。この薬売りのキャラクターは普段そんなにしゃべるキャラクターではないだけに、その演技センスが際立っていますね。