「野次馬系ユーチューバー」扱いされても怯まない
メディアと政治家の怪しい関係が浮き彫りに
映画の内容を見ていこう。手始めに、2021年に行われた衆議院選挙の選挙取材を敢行する2人。行き先は『香川1区』の舞台でもある香川県。題して「香川区、題して『香川1区ナンデス』」だ。
自民党の重鎮の1人で、菅義偉内閣でデジタル改革担当大臣を務めた平井卓也氏と立憲民主党の小川淳也氏に加え、日本維新の会から出馬した町川順子氏にも体当たり取材を敢行。さらに各陣営の事務所にも赴き、忖度なく話を聞き出そうとする。
取材のハイライトは、ダース&鹿島vs四国新聞。四国新聞社(および西日本放送のとその関連企業)は、平井氏の父・平井卓志元参議院議員(故人)が社長を務めていた、いわゆるファミリー企業だ。少なくとも、香川県においては、平井一家がメディアに及ぼす影響力は強い。平井陣営は、四国新聞を通じて、ライバル陣営である小川氏に対するネガティブキャンペーンを展開。そこに公共性や中立性といったメディアの原理原則は存在しない。2人は平井陣営に取材を申し込むも、対面取材で深く追及されることを恐れたのか、ファックスでのやり取りを提案される。観る者は、平井陣営の腰が引けた対応に不信感を募らせるだろう。
その香川1区で、選挙取材の楽しさに目覚めた2人は、2022年の参議院選挙も取材をしようと考えた。自分たちにしか持てない視点、テーマを絞った取材をしたい。2人が取材をする基準は「ヒリヒリする現場」である。そこで目を付けたのが、立憲民主党の菅直人元首相だ。
すっかり“隠居生活”に入ったと思われていた菅氏だが、2022年に入ってから、突如、日本維新の会に対して激しい批判をするようになる。ツイッターでは維新の政治家をヒトラーになぞらえて物議を醸したのも記憶に新しいだろう。維新のみならず、身内から抗議を受けてもひるまず、「闘うリベラル宣言」と称して、参院選では維新の牙城である大阪に乗り込んだ。ダースレイダーとプチ鹿島は、菅氏が大阪特命担当として立憲民主党の候補者の応援に入ると聞きつけ、ここぞとばかりに大阪に足を運ぶ。
菅氏vs維新のバトルを味わいつつ、辻元清美氏(立憲)、辰巳孝太郎氏(共産)、高木元清美氏(立憲)、高木かおり氏(維新)、松川るい氏(自民)ら各候補者にも、「野次馬系ユーチューバー」扱いを受けながら、積極的に取材する。ドキュメンタリーならではの迫真の映像が続く。
選挙戦後半には、自民・立憲・維新の三つ巴の激戦区と言われる京都にも乗り込む予定にしていた。しかし、思いもよらぬ事件が起こる…。