サプライズ性と話題性で理想的なプログラムに

暉峻創三 写真:武馬怜子
暉峻創三 写真:武馬怜子

――オープニングに対して、クロージング作品には日本の話題作が入っています。

暉峻「そこに気がついていただいたことは嬉しいところです。昨年のクロージング作品は作品国籍としてはアメリカですが、井浦新さん主演『東京カウボーイ』を上映しました。今年は高橋伴明監督の話題作『「桐島です」』です。そもそもオープニングやクロージング作品というものは、レッドカーペットを賑わせ、ある程度話題性があるゴージャスな作品を選ぶのが国際映画祭の王道です。

昨年と一昨年のオープニング作品は偶然、超人気スターが出演する香港映画でしたが、そういう路線ばかり続けていると挑戦性がない映画祭というイメージができてしまう。大阪アジアンではどちらか一方は、事前の話題性や人気に左右されない作品をあえて入れようと努めています。今年はオープニングにサプライズ性がある『愛の兵士』、話題性がある『「桐島です」』をクロージングに据えることで理想的なプログラムになりました。

『「桐島です」』は、タイトルを見ただけで誰もが見たくなる作品です。指名手配犯・桐島聡が入院して死去したという実際の出来事からまだ1年しか経っていません。そして偶然、同じ題材を描く足立正生監督の『逃走』がロードショー中です」

――話題性で言うと、主演の毎熊克哉さんのファンの方もこぞって来場しますね。

暉峻「そうでしょうね。毎熊さんはファンも熱い方が多ですし、演技力はもちろん、役柄への解釈も深く説得力がある俳優です。ものすごい数の映画に出演されていますが、『「桐島です」』は毎熊さんの代表作になると思います。それくらい素晴らしい演技をされています。

全く架空のキャラクターを演じることに比べ、桐島という実在のキャラクターを演じることはそれだけで大変だったと思います。なぜか有名な指名手配写真だけは知られていて、イメージが先行して強い。あのイメージに収まる辺りから映画は始まりますが、指名手配された後の姿で生きている時代を演じる上でも圧倒的な説得力があります。誰もが引き込まれると思います。

監督の高橋伴明さんは現在75歳。桐島が活動していた時代をよく知っている世代だからこそ、その時代の空気感が生々しく伝わってくる。高橋監督は、2012年の大阪アジアンで、『道〜白磁の人〜』という日韓合作映画をオープニング作品にしました。今回20回目の開催を迎え、過去にオープニングを飾った監督作をこうしてクロージングに据えられたことが嬉しいです。さらにもう一つ見ていただきたいポイントは美術です。限られた予算の中でこれだけ当時を再現した美術が作れたことは、それだけで本当にすごい。美術を見ているだけでも堪能できると思います」

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